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新型コロナで「外出禁止」解除後のフランスの「赤と緑」の世界

全土に広がる「1㍍間隔」遵守。正体不明のコロナとのシュールな戦いはまだまだ続く

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

拡大パリの地下鉄を利用する乗客。ホームには「距離をとろう。私たちみんなの健康のために」と記されたマーク(手前)が貼られている=2020年5月11日、疋田多揚撮影

 フランスの「Dデー」、待ちに待った「外出禁止」解除の5月11日がやってきた。とはいえ、嬉しさも中位で、実際は「段階的解除」(マクロン大統領)。この日の解除はごく一部のうえ、フランス全土が新型コロナウイルスがまだウヨウヨいる危険な「赤」と、コロナウイルス減少傾向をみせる「緑」の地域に二分された。くわえて、一種の戒厳令である「(健康)緊急事態宣言」も7月24日まで続行中だ。

 文豪スタンダールは傑作「赤と黒」で、19世紀の厳しい階級社会に挑戦したジュリアン・ソレルのドラマチックな生涯を描いたが、コロナという正体不明な相手との21世紀の戦いは、「赤と緑」の二分化されるフランス的なシュールな戦闘だ。

外出「許可証」が不要になったパリ

 「赤」と「緑」の区分けの基準は、①コロナの蔓延度=感染状況②医療状況(集中治療室や医師、看護人の充実度)③感染検査や防止態勢――の3点だ。

 具体的には、イル・ド・フランス地方(パリとその周辺の7県)や東部地方など4地方と仏特別自治区マヨット(コロモ諸島のひとつ)が、「赤」(5月11日現在)地域に認定された。フランス全土の約30%に当たる。

 筆者にとって、「外出禁止」下での外出時の“三種の神器”は、「許可証」「マスク」「手袋(ビニール製)」だった。「赤」地域のパリ在住の筆者の場合、5月11日以降、「許可証」が不要になったが、これだけでも約2カ月間、缶詰が主食の文字通り“缶詰生活”からの解放感は十分に味わえた。

 シャンゼリゼ大通りはこの日、雨模様にもかかわらず、時間、距離制限なしの自由を謳歌(おうか)する人たちで、久しぶりに賑わった。


筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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