全土に広がる「1㍍間隔」遵守。正体不明のコロナとのシュールな戦いはまだまだ続く
2020年05月15日
文豪スタンダールは傑作「赤と黒」で、19世紀の厳しい階級社会に挑戦したジュリアン・ソレルのドラマチックな生涯を描いたが、コロナという正体不明な相手との21世紀の戦いは、「赤と緑」の二分化されるフランス的なシュールな戦闘だ。
「赤」と「緑」の区分けの基準は、①コロナの蔓延度=感染状況②医療状況(集中治療室や医師、看護人の充実度)③感染検査や防止態勢――の3点だ。
具体的には、イル・ド・フランス地方(パリとその周辺の7県)や東部地方など4地方と仏特別自治区マヨット(コロモ諸島のひとつ)が、「赤」(5月11日現在)地域に認定された。フランス全土の約30%に当たる。
筆者にとって、「外出禁止」下での外出時の“三種の神器”は、「許可証」「マスク」「手袋(ビニール製)」だった。「赤」地域のパリ在住の筆者の場合、5月11日以降、「許可証」が不要になったが、これだけでも約2カ月間、缶詰が主食の文字通り“缶詰生活”からの解放感は十分に味わえた。
シャンゼリゼ大通りはこの日、雨模様にもかかわらず、時間、距離制限なしの自由を謳歌(おうか)する人たちで、久しぶりに賑わった。
この政府発行の「許可証」は、中央集権国家フランスの“傑作“のひとつだ。パソコンを使ってインターネットで入手。ただし、パソコンのできない人は手書きでもOKというのが、フランスらしい。
「許可証」を持参していないと罰金135ユーロ(1ユーロ=120円)。1カ月間に4回違反すると禁固半年、監視の警官を罵倒でもしようものなら、1年の禁固刑が科せらえた。
知人の日本人は「近所だから」と油断して「許可証」なしで買い物に出かけてパトロール中の警官に遭遇、罰金を取られた。車で1㌔以上を「ちょっとオーバー」したフランス人の友人夫婦は、「2人分の罰金」を支払うハメになった。
ふだんは文句や抗議の多いフランス人が、極左政党・「服従しないフランス」の党首メランションをはじめとして、「外出禁止」に素直に服従したのは、
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