「ポスト近代化」の胎動がはじまっている
2020年05月19日
2019年5月25日、世界保健機関(WHO)は、2022年1月1日に発効予定の「疾病・関連保健問題の国際統計分類第11版」(ICD-11)を承認した。疾病や死因の国際比較可能な統計基準を示すための総目録のようなもので、これに含まれるようになれば、国際的な認知を受けたことになる。
このICD-11が特徴的なのは漢方薬(Traditional Chinese Medicine, TCM)の章がはじめて入れられたことだった。中国の伝統的な治療方法(広義の東洋医学)が世界に認められるための「偉大な一歩」となったと言える(China.org.cn 2019年5月27日付)。
しかし、この決定は反発を受けてきた。「ネイチャー」(2019年6月5日付)によれば、一部の非科学的な実践をも正統化しかねないリスクがあり、多くの証明されていない治療法の販売を拡大することになるにすぎないという。加えて、TCMで使用するために殺される、トラ、センザンコウ、クマ、サイのような動物をますます危険にさらすことになる(CNN2019年5月26日付)。
ここでは、中国文明が培ってきた漢方薬への批判を展開したいわけではない。とりあげたいのは近年、中国政府が先端医療研究で独自の歩みを遂げていることへの疑問である。中国・武漢を中心に広まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の例からわかるように、正当性に問題のある研究がやがて世界中に大打撃をあたえる可能性がある以上、国家単位で展開される生物・医療分野の研究について再考する必要がある。
すでに遺伝子組み換え生物(Genetically Modified organism, GMO)として知られるさまざまな動物が出現している。
GloFishという会社はGMOとして発光する魚やカラフルな色の魚を観賞魚として販売している。カナダで1990年代に開発されたGMOである、「アクアアドヴェンチャー」と呼ばれる急速に成長する鮭については、2019年になって米食品医薬品局が米国への輸入制限を撤廃し、米国内での養殖も認めた(The Counter2019年3月11日付)。
生殖不能な生命力の弱い蚊をつくり、それを自然界の蚊と交配させて、デング熱などを媒介する蚊そのものの数を減らそうという試みも有名だ。蚊の増殖を妨げるために、
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