スペイン、ロシアでお世話になったあの人たちは今……
2020年05月19日
COVID-19の感染が拡大してから気になっていたのは、これまで8年間の「定住旅行」で滞在させていただいた各国の家族が、どんな暮らしをしているのかということだった。
著者が定住旅行してきた国は、日本人にはあまり馴染みのない国が少なくない。ただ、滞在が終わった後も頻繁に連絡を取っている家族も多く、今回、オンラインであらためて話を聞くと、どの国でも様々な制限のもと、これまでの暮らしが大きく変わっている様子がありありだった。
本稿では、その中から多数の感染者、死者を出しているスペイン、そしてロシアを取り上げ、現地の様子をお伝えしたい。
今年の2月には1人だったCOVID-19の感染者が、瞬く間に増加。感染者数が23万人を超え、死者数も2万7500人以上になっているスペイン(5月17日現在)。政府は3月末から全国で厳しい移動制限を行っていたが、4月28日にサンチェス首相は、「新たな日常」に向けての規制緩和プランを提示した。
規制の緩和は4段階(フェーズ0からフェーズ3)に分けられている。現在は、時間帯と年齢による外出緩和が行われており、散歩や運動が可能となっている。
スペイン人は挨拶やコミュニケーションを取る際に、“濃厚接触”することがが多い。社交的で普段から頻繁に親や友人たちと会うこと、靴を脱ぐ習慣がないことなどが、感染を大きくしたものとみられる。マスクの着用や手洗いやうがいの励行を教育現場などで強く教える頻度も、日本と比べて低いと思われる。
ロックダウンが行われている時期は、食料と医療品の購入、ペットの散歩以外の外出は不可とされていた。日常的にバーやレストランで友人たちと集うことを生きがいの一つにしている彼らからすると、外出できないという状況が非常に苦痛であることは容易に想像できる。
ロックダウンが行われて、スペインのスーパーからまず消えたもの、それは日本同様のトイレットペーパーだ。現在、急速に需要が増えているのがイースト菌である。スペイン人の毎日の食卓に欠かせないパン。これを自宅で手作りする人や、お菓子やケーキなどを焼いたりする人が急増しているのだそうだ。
一般家庭の様子を知るため、スペイン北部バスク地方サンセバスティアンに暮らすエスピノサ一家にインタビューを行った。
サンセバスティアンは世界有数の美食の街として、フードツーリズムが盛んな地域だ。しかし、観光の目玉であるバルが立ち並ぶ通りは今は閑散としており、長引く混乱で倒産を余儀なくされた店も多い。
エスピノサ家は4人家族。小学生の娘が2人いる。ロックダウンが始める少し前に新しい住居へ引っ越したばかりで、突然の外出制限が行われた最初の1週間は、環境の変化と家の片付けに加え、学校から指示される子供たちへの課題の対応で、大変だったという。旦那のアンドレスさんはベネズエラ人。バスク語が話せないため、宿題や学校で習う勉強の補助は、バスク人の奥さんが仕事をしながら手伝っている。
2ヶ月の外出制限期間中に新たに始めたこともある。バルコニーの花を増やすこと、バスタブにお湯をためてお風呂に入ることになったこと、ピザをづくりをすること、だ。
平日は、家の中でそれぞれ自分のエリアを決めて、オンライン授業を受けたり、仕事をしたりしているそうだ。また、在宅でも外出時と同じように服を選んだり、アクセサリーをつけたりして、気分に変化をつける努力をしているという。
オンライン授業にすっかり慣れた娘たちは、
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