憲法学者がいない…これでいいのか日本の最高裁判所
2020年05月19日
安倍政権による検事長の定年延長問題は、国会での検察庁法改正の動きへと発展し、検察組織と政権の在り方が問われた。
この機会に、最高裁判所を頂点とした日本の裁判所の組織、さらには日本の司法界の状況について、海外の目から問題を提起したい。
日本と同じく平和憲法を持つ中米コスタリカは、この憲法の理想を単に掲げるだけでなく、本当に軍隊をなくした。
この国では、小学校低学年から分厚いイラスト入りの冊子の教材で民主主義について教育し、小学生が憲法違反の訴訟を起こすほど憲法や法律に対する国民の関心が高い。立憲主義が根付いており、民主主義の成熟度の高さを感じさせる。
休業で仕事をなくした人に向こう3カ月の生活費を給付するなど、国民の生活を重視した手厚い政策を続けている。このため、政府への国民の信頼が厚い。
この1月、私は首都サンホセの憲法裁判所を訪れた。最高裁判所の中の憲法判断を扱う部門だ。
4階の合議室に通された。憲法裁判所の判事7人が向き合う楕円形のテーブルがある。判事が座る椅子に座って、広報担当者から話を聞いた。
憲法裁の裁判官のトップにいるフェルナンド・カスティジョ長官も顔を出し、「人権が常に保護されているようにするのが私たちの仕事です」と気さくに語った。
コスタリカの対極にあるのが、権力側を向き、国民に門を閉ざすようにも見える日本の最高裁判所だ。
昨年11月に埼玉弁護士会が主催して、「これでいいのか最高裁!?」というシンポジウムが、さいたま市浦和区で開かれた。
コスタリカ、ドイツ、韓国と日本を比較して、最高裁の在り方をさぐる企画だ。パネリストは私のほか2人。元裁判官で『絶望の裁判所』の著書がある明治大学法科大学院教授の瀬木比呂志氏と、中央大学教授(憲法専攻)で衆院憲法調査会参考人の畑尻剛氏だ。
ここで、驚くべきデータが示された。1947年に現在の憲法下で最高裁が発足してから、最高裁の判事は180人を数える。うち教授出身は14人だが、その中で憲法学者はわずか1人しかいなかった。憲法違反を審議するのに、180人の中で憲法学者が、たった1人だけだという。それは
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