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カイロからソウルへ 韓国チャーター機に乗り込んだ南スーダンの女の子

リ・セヒョン 東亜日報カイロ特派員

 『東亜日報特派員のコラムから』は、韓国の大手紙・東亜日報の海外特派員が韓国の読者に向けて執筆したコラムを日本語に翻訳して紹介する連載です。
 韓国はコロナウイルス対策で世界の評価を高めました。私たちの隣国では世界各地のニュースはどのように報じられているのか、韓国メディアの特派員はどのような記者たちなのか。日本メディアが報じる海外ニュースと比較して読むのも面白いかもしれません。
 初回はカイロ特派員のリ・セヒョン記者のコラムです。(論座編集部)

東亜日報カイロ特派員のリ・セヒョン記者
 5月5日午前11時半(現地時間)、エジプト首都カイロの国際空港。新型コロナウイルス感染症(コロナ19)拡散により、国際線の運航が中断されたエジプトで足止めを食った韓国人同胞と企業駐在員の140人余りが韓国行きチャーター機に乗るために続々と集まっていた。

 その中で見慣れない顔があった。南スーダンのグローリア・ガンジーさん(4歳)だ。

 韓国人ではないが、グローリアも韓国行きの飛行機に乗るために空港に来たのだ。

手術を受けるために韓国へ入国する南スーダン出身のグローリア・ガンジーさん。韓国人宣教師提供

 韓国に行く理由を尋ねると、緊張した表情で父親の手をぎゅっと握りしめ、記者をジロジロと見上げた。同行した知人は「怖がるかと思って、まだ病院に行くということは話していない」と私に耳打ちした。

 グローリアが韓国に行く理由は、食道辺りに引っかかっていた金属片が、肺と心臓の間に移動し、それを除去する手術を受けるためだ。

 グローリアは昨年8月、南スーダンの家で屋根修理をしている際に落ちた金属片を飲み込んでしまった。病院に行ったが、「南スーダンではこのような手術は難しい」と言われた。

 父親のサント・ガンジー氏は、グローリアを連れて昨年11月、親戚のいるエジプトへ来た。しかしエジプトでも「手術できる」と自信を持って言う病院は探せなかった。

 グローリアのこのかわいそうな便りは、エジプトで活動しながらスーダン人を助ける韓国人宣教師に伝えられ、この宣教師が援助してくれる韓国の病院を探した。そして最近、延世(ヨンセ)大学セブランス病院から無料で手術をするという連絡を受けた。

 サント・ガンジー氏は「韓国は医療水準が高くて、コロナ19にもしっかり対応したと聞いており、グローリアが韓国で治療を受けることができるようになったことはとても嬉しい」と語った。そして「グローリアだけでなく、南スーダンの沢山の痛ましい子どもたちも韓国の支援で病いを治療することができれば素晴らしいことだと思う」と控えめに付け加えた。(2020年5月6日 翻訳・藏重優姫)


《訳者の解説》

 その後集めた情報によると、この記事にある「延世大学付属セブランス病院」がグローリアの手術費、渡航費、宿泊費などを提供し、韓国政府が実施している「入国から二週間の隔離」を踏まえて手術するということであった。

 私は韓国に移り住んで7年になるが、ここでは、入れ歯よりもインプラントが主流で、クリニックでの肌の管理はもちろん、美容整形、遠隔ロボット手術など、すでに庶民的なものになっていることを感じている。高価なものゆえ、庶民からはいつまでも遠い話……ではないのだ。

 韓国の伝統芸能界でも伝統をひとつのブランドコンテンツとして世界に売り出そうと、政府からの支援が充実している。海外で十分な医療を受けられない人を助けることによって、医療技術の宣伝、輸出にも一役買うのは当たり前で、何よりもそれらのスピード感がすごい。

 特派員コラムに登場する韓国のチャーター機には、日本人2名も搭乗しており、仁川(インチョン)空港から無事日本に帰国した。数週間前には、日本のチャーター機で韓国人が韓国に帰国できた、というニュースを見たところである。

 近い国なんだから、合理的な貸し借りや助け合いは当たり前だ。行き来の無いこの間の日韓であるが、この小さな往来のニュースで少し心温まる感じがするのは私だけであろうか。

 藏重優姫(くらしげ・うひ) 韓国舞踊講師、日本語講師。日本人の父と在日コリアン2世の間に生まれる。大阪教育大在学中、韓国舞踊に没頭し韓国留学を決意。政府招請奨学生としてソウル大で教育人類学を専攻し舞台活動を行う。現在はソウル近郊で多文化家庭の子どもらに韓国舞踊を教えている。「論座」で『日韓境界人のつぶやき』連載中。