メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

安倍政権の執着が招いた黒川元検事長人事騒動の本質

権力についての見識と自制心を欠く安倍政権の現実

星浩 政治ジャーナリスト

拡大車から降りて無言で自宅に入る東京高検の黒川弘務検事長=2020年5月21日午後6時44分、東京都目黒区

 安倍晋三政権が強引に進めてきた検事総長人事は、首相官邸が定年延長まで強行して推した黒川弘務・東京高検検事長の「賭けマージャン」発覚による辞任で、あっけなく頓挫した。この人事を後付けするために国会に提出された幹部検察官の定年延長法案も成立を断念、先送りされた。

 一連の過程で浮き彫りになったのは、検察庁を含む霞が関の官僚の人事権をあくまで握り続けるという安倍政権の執着心である。それが、権力維持の源泉と信じているためだ。しかし、冷静に分析すると、この官邸主導人事が、霞が関に「権力による支配」という風潮を広め、政策決定をゆがめるという問題点を浮き彫りにしている。

官邸の意向にひれ伏す官僚たち

 いまの安倍政権は、官邸に設置された内閣人事局を中心に霞が関の官僚支配を強めてきた。各省の事務次官、局長、審議官など約600人の人事は、内閣人事局の了承を得なければ進まない。

 人事局のトップは現在、杉田和博官房副長官(事務)だが、杉田氏は主要人事については菅義偉官房長官と安倍首相に相談する。実質的には菅、安倍両氏が霞が関の人事権を握っている。政権発足から7年半、霞が関の官僚たちは、官邸の意向にひれ伏すようになった。安倍、菅両氏にとっては予想以上の「従順さ」と映っただろう。

 官邸主導人事は、具体的にはどう運用されているのか。

 各省庁は、事務次官や主要局長について複数の案を官邸側に提示。その内容を説明しながら、官邸側の判断を仰ぐ形となっている。杉田副長官は、あらかじめ安倍首相や菅官房長官の意向を聞き、各省庁との折衝に当たる。多くの場合は役所側が「本命」としている人事が通るが、時には本命以外が指名されるケースもあるという。

 さらに、役所が提示した候補以外を官邸が要求する例もある。その場合、役所は持ち帰って再検討するが、最終的には官邸の案が採用される場合が多い。それぞれの人事の折衝経過は、役所内に伝えられ、広がっていく。「〇〇次官案がつぶされた」「××局長案は菅さんの意向らしい」といったうわさは、霞が関の格好の話題となる。それが、安倍官邸の権力の源泉となるのである。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

星浩の記事

もっと見る