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安倍「おべっか」外交はトランプに通用したのか?

第7部「ドナルド・シンゾウ―蜜月関係の実像」(1)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 安倍晋三首相は2016年11月、大統領就任前のトランプ氏と外国首脳としては初めてニューヨークで会談して以来、ゴルフ外交を含めて頻繁に首脳会談を重ねてきた。しかし、1980年代から「日本は米国を利用し続けてきた」と考えるトランプ氏は日本に対しても追及の手を緩める様子はない。日米貿易交渉では対日貿易赤字の削減を迫り、米国製武器を購入するように求め、米国の失われた富を取り戻そうとする。アメリカ・ファーストを訴えるトランプ氏のもとで国際社会のリーダー役を放棄しつつある米国と、経済・軍事的に台頭著しい中国に挟まれる格好の日本。蜜月と言われる「ドナルド・シンゾウ」関係のもとでの日米関係の実像に迫る。

「米国攻撃時にソニーのテレビ見ているだけ」

 会場を埋め尽くす大観衆を前に、米大統領選の共和党候補、トランプ氏はいつものように饒舌だった。

 2016年8月5日、アイオワ州デモインでの選挙集会。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と批判し始めると、今度は「我々は日本、韓国、ドイツ、サウジアラビアやほかの国を守っているが、彼らはカネを払っていない」と声を張り上げ、さらには「日本叩き」へとボルテージを上げた。

 「最近、軍の将軍の一人が私のところに来て、こう言ってきた。『トランプさんは知らないでしょうが、日本は米軍駐留経費負担の50%を支払っているのです』と。だから私はこう言い返してやった。『どうして彼らは100%を支払わないのだ?』と」

 聴衆は喜び、歓声の声が上がる。

 「ヒラリー・クリントンのような人間が交渉の席に着けば、『我々は決して同盟国を見捨てない』と言うだろう。その言葉は美しいと思う。しかし、我々はこう言わなければいけない。『我々は君たちを決して見捨てない。しかし、君たちは我々にもっとカネを払わなければいけない』と」

 拍手喝采を受けながら、トランプ氏は言葉を続ける。

 「日本は北朝鮮から自国を守るのは難しいだろう。我々が日本との間で条約を結んでいるが、もし日本が攻撃されれば、我々は米国のもてるすべての力を使わなければいけない。しかし、もし米国が攻撃されれば、日本は何もしなくて良いのだ。彼らは家にいてソニーのテレビを見ていれば良いのだ」(LesGrossman News. “Donald Trump & Mike Pence In Des Moines 8/5/16 FULL SPEECH.” 5 August 2016.

 聴衆から日本への不満の声が沸き上がった。

 トランプ氏の対日観は、1987年に米紙ニューヨーク・タイムズなどに公開書簡を出したときから何ら変わっていなかった。トランプ氏は公開書簡の中でバブル経済で好景気にわき、米国から経済的な脅威とみられた日本を名指しで非難し、「米国が日本などの国々を同盟国として防衛しているわけだから、彼らにその費用を払わせろ」と主張していた(Ben-Meir, Ilan. “That Time Trump Spent Nearly $100,000 On An Ad Criticizing U.S. Foreign Policy In 1987.” BuzzFeed News 10 July 2015.)。

拡大ホワイトハウスで共同会見する安倍首相(左)とトランプ米大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年6月7日

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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