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日本の安全保障というよりも「海兵隊」という組織を守るためだった沖縄駐留

第7部「ドナルド・シンゾウ―蜜月関係の実像」(3)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 安倍晋三首相は2016年11月、大統領就任前のトランプ氏と外国首脳としては初めてニューヨークで会談して以来、ゴルフ外交を含めて頻繁に首脳会談を重ねてきた。しかし、1980年代から「日本は米国を利用し続けてきた」と考えるトランプ氏は日本に対しても追及の手を緩める様子はない。日米貿易交渉では対日貿易赤字の削減を迫り、米国製武器を購入するように求め、米国の失われた富を取り戻そうとする。アメリカ・ファーストを訴えるトランプ氏のもとで国際社会のリーダー役を放棄しつつある米国と、経済・軍事的に台頭著しい中国に挟まれる格好の日本。蜜月と言われる「ドナルド・シンゾウ」関係のもとでの日米関係の実像に迫る。

沖縄問題に関心低いワシントン

 2019年10月、沖縄県の玉城デニー知事の姿は首都ワシントンの連邦議会議事堂にあった。日本政府が進める米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設の見直しを求め、連邦議員たちと会談するためだった。

 玉城氏がこのタイミングで訪米したのは、米上下院が2020会計年度(2019年10月~2020年9月)の国防予算の枠組みを定める国防権限法案について協議していたからだ。上下両院はそれぞれ独自の法案を作成しているが、上院案に米軍再編に絡む在沖海兵隊のグアムやハワイへの分散配置計画の再検証を米国防総省に求める「見直し」規定が含まれていた。

 玉城氏としては「見直し」規定が盛り込まれた国防権限法が成立することで、現行の辺野古への移設計画の見直しにつながることを期待していたわけである。

 玉城氏は計10人の連邦議員と面会し、このうち4人は法案審議に直接関わる立場の議員だった。玉城氏は面会した議員たちに辺野古への移設計画をめぐり、「無謀な計画は見直すべきだ」と伝えたという。

 しかし、その後の上下両院の調整の結果、法案からは「見直し」規定は削除されて国防権限法は成立。玉城氏ら沖縄県側の期待は叶わなかった。

拡大米国政府関係者と会談する玉城デニー知事(手前右)=2018年11月15日、ワシントンの米国務省、沖縄県提供

 辺野古移設に対するワシントンの関心は極めて低い。

 米議会の一部で国防権限法に「見直し」規定の盛り込みが一時検討された大きな理由は、米軍再編にかかるコストが想定以上に膨らんでいるという懸念があったためだ。しかし、米議会、米政府ともに、米軍再編計画の一部である辺野古移設について計画を見直そうという動きはほとんどない。

 米側にとってみれば、辺野古への移設計画は日本政府との間で「唯一の選択肢」と何度も確認されているすでに解決済みの問題だ。日本政府が責任をもって建設するべきだという立場をとっており、辺野古移設を推し進める安倍政権の取り組みを評価しているからだ。

 安全保障問題を持ち出して日本をゆさぶるトランプ氏にとっても、辺野古移設については建設にかかるコストを日本側が負担して進めているわけであり、移設計画に「待った」をかける理由はなく、関心もないというわけだ。

 「ドナルド・シンゾウ」関係において、辺野古移設工事に反対する沖縄県の民意に正面から向き合い、解決策を見出そうとする姿勢は微塵もみられない。


筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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