「日米同盟基軸」でも他国にヘッジをかける日本
第7部「ドナルド・シンゾウ―蜜月関係の実像」(4)
園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員
日米の対中観ギャップ
日米両国は中国を安全保障上の共通の脅威と認識しているものの、両国の対中観を詳しく見たとき、米国は中国に対して対決姿勢を強めているのに対し、日本は協調を探るなどのギャップも見られる。

ホワイトハウスで共同会見するトランプ大統領(右)と安倍首相=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年6月7日
例えば、米国と同じ名称の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想にも違いがある。
日本版FOIP構想はもともと、安倍晋三首相が2016年8月、ケニア・ナイロビで開かれた第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で発表し、アジアとアフリカを結ぶという意味合いを込めて「インド太平洋」という名称と使った経緯がある。日本版FOIP構想では米国が抜けた後の環太平洋経済連携協定(TPP)11といった多国間の自由貿易を重視して保護貿易主義に対抗する考えがあり、トランプ政権の方向性とは異なる側面もある。
また、中国との関係改善に動く日本は2018年11月にはもともとの名称だったFOIP「戦略」から「構想」へと名称を修正した。「戦略」は安全保障用語であり、軍事的な対立を想起させるため、「構想」へと変えたとみられる。米国版のFOIP構想が日米豪印といった枠組みを使って中国と対抗するという軍事戦略的な性格を強めているのとは対照的だ。
米政府当局者によれば、2020年4月に予定されていた中国の習近平国家主席の国賓としての訪日については、日本政府当局者から「今まで『マイナス』の関係だった日中関係を『ゼロ』に戻すためだ。日本は中国に対して米国と同じ歩調をとるが、地政学的に米国と同じ態度はとれないという点を理解して欲しい」という説明を受けたという。