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今こそ「ベーシック・インカム」導入を唱えよ

アジェンダ設定による情報操作に気をつけて

塩原俊彦 高知大学准教授

 筆者が生まれてはじめてmanipulation(情報操作)という言葉を耳にしたのは、いまから40年ほど前のことだった。もう取り壊されてしまった九段会館で実施された岩波文化講演会で、評論家の加藤周一がmanipulationの危険について注意喚起していたことをいまでもよく覚えている。彼の危惧は「コロナ禍」のいまの日本にもあてはまる。

 世論の情報操作は、意図的なアジェンダ設定、不正確で歪められた内容、心理的挑発を通じた情報伝達などの手段によって行われることが多い。アジェンダ設定というのは、注目を集めるべき論点を提示して、その論点に耳目を集めて、その問題よりもより重大な問題に関心を向けないようにする手段となる。

「9月就学」問題は目くらまし

 その典型例は、9月就学への移行問題をコロナ禍で議論することだ。教育問題は、就学者とその家族など、多くの人々を巻き込んで簡単に議論を巻き起こすことができる。多くの国民の耳目を集め、関心の的とすることを可能にする。その分、別の問題への関心をそらすことができる。

 たとえば、コロナ禍の間に、日本原子力発電が敦賀原発2号機の再稼働をめざして原子力規制委員会に提出した安全保障資料を無断で80カ所以上書き換えていたことが問題になっていることを知る国民は少ないだろう。

 筆者は9月就学を議論するよりも、いまこそ大切なのは「ベーシック・インカム」(BI)の検討であると考えている。アルバイト収入の減少で、大学や大学院をやめざるをえない学生の増加に心を痛めているからだ。

拡大ベーシック・インカムの是非を問う国民投票に訪れた男性=2016年7月1日、スイス・バーゼル

 もちろん、この問題をいま議論しても、すぐにBIが実現するわけではない。ただ、少なくとも9月就学問題より、ずっと重要な喫緊の課題であると思う。なぜならこの問題はまさに「働き方」にかかわる重大問題であるからだ。加えて、BIは世界的潮流であり、時代がBIを求めていることを忘れてはならない。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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