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世論は怒った。検察庁改正法案のごり押し

[190]江田五月元法相、衆院内閣委員会、検察庁法改正案……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

5月13日(水) 国会での検察庁法改正の動きが緊迫してきたので、今週の「報道特集」の後半特集はこの動きを追うことになった。それとは別の重要案件で急遽、大阪へ。僕の方は、明日以降の動きがあるので、ほとんどトンボ返りのような形で東京に戻った。あとの取材は、CディレクターとMカメラマンのコンビに任せた。

 衆議院の内閣委員会、今日の採決が見送られたことを受けて、あした以降の動き方をいろいろと考える。検察OBやネット世論の動きも含めて動き方を考えよう。「毎日新聞」のコラムの原稿。マスクをした「火事場泥棒」について書く。旧知の堀田力さんサイドと綿密に打ち合わせ。今回はかなりナーバスになっておられるようだ。しかしある世代以上の検察OBが激烈に怒っていることは確かだ。

 ロサンジェルスが3カ月ステイホームを延長するとか。先日Skypeを使ってお話をしたロス在住の桃井かおりさんも大変だろうなあ。

5月14日(木) 朝、大阪経由で岡山へ。江田五月元法務大臣のインタビューのためだ。駅前でRディレクター、Nカメラクルーらと合流。江田さんはとてもお元気だった。江田さんの弁護士事務所のクライアント打ち合わせ室には、テーブルの上に透明なアクリル板が設置されていて、新型コロナウイルス対策が施されていた。インタビューをするにはちょうどよい塩梅なので、そこで向き合ってお話をうかがうことにした。

 江田さんは法務大臣当時、黒川弘務東京高検検事長(当時は法務省の大臣官房付および大臣官房長)と一緒に仕事をした経験がある。検察の在り方検討会議で、取り調べの可視化などの取りまとめを行った能吏だった、という。江田さんは、黒川検事長の定年延長の閣議決定は、三権分立を破壊する前代未聞の出来事だと激しく怒っていた。そして、今回の検察庁法改正案は、検察の「公正らしさ」「公平らしさ」という一番大切なもの、検察の独立性を根底から覆すものだと厳しく批判していた。

江田五月元法相拡大江田五月元法務大臣

 話が弾んで神保町とのオンライン会議に参加すること叶わず。岡山在住の敬愛する曽根英二大兄と岡山駅前で束の間の面談。といっても、岡山市内はどこも喫茶店が開いておらず、駅前の広場でベンチに座って話をする羽目に。日差しがきつい。肌がジリジリ焼けてくるのがわかる。ペットボトルのお茶を2人で飲みながら、今のマスメディアがいかにダメになっているかを小一時間話して別れた。

 新幹線で東京駅に帰着すると、駅は閑散としていた。専門家会議の緊急事態宣言の延長などをめぐる再評価があり、東京圏、大阪圏、北海道を除く他県は宣言の解除の方針。午後6時からの記者会見を新幹線の車両の中で聞いたが、本当に無内容だった。記者らの質問も低調だった。

 NHK「クローズアップ現代+」を何気なく見ていたら、新型コロナと自然災害というおそろしいシナリオを想定して警告を発していた。自然災害で何度も取材をしてきた日本型避難所は、いわゆる「3密」が避けられないのではないか。となると、どうなるのだ。コロナ禍は。

 今朝の朝日新聞の朝刊に堀田さんの激越なインタビュー記事を先に出されてしまった。まあ、仕方がないか。

 SNS上で「#検査庁法改正案に抗議します」がとんでもない数になっている。何人かの著名人にあたってみたが、歌手や俳優は所属事務所がものすごいガードに入っていて、本人にとりついでさえくれない。理由がないわけではない。それは所属事務所や本人の家族、スポンサー、場合によっては妻の実家にまで、中傷、脅迫、嫌がらせなどが押し寄せてくるからだ。その内容も「歌手のくせに」「役者のくせに」とか「干してやる」とか「ファンだったのにがっかり」とか、総じて悪質なものが多い。それで最終的に本人が、今はやっぱりSNS止まりで、マスメディアには出ないでおこうということになっている。何人かに断られたが、信頼しているミュージシャンを通じて小泉今日子さんにコンタクトすることができた。至極、誠実な内容のメールをいただく。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『抗うニュースキャスター』(かもがわ出版)、『漂流キャスター日誌』(七つ森書館)、『筑紫哲也『NEWS23』とその時代』(講談社)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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