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検察庁法改正問題の本質を見よう

これほどの重要課題がコロナ危機の中で拙速に処理されようとした驚き

田中均 (株)日本総研 国際戦略研究所特別顧問(前理事長)、元外務審議官

 検察庁法改正案は今国会での審議が断念され、賭け麻雀問題で黒川弘務東京高検検事長が辞任した。しかしこれで問題が決着した訳ではなく、国家公務員及び検察官の定年延長問題がこれからどう取り上げられていくのかは今後の展開を待たなければならない。

 ただ政府が提出した検察庁改正法案は、国の統治の在り方について深刻な問題を提起している。それは、政治権力が検察や警察といった強制力を行使する行政組織へ人事面で介入を強めることによって、組織の政治的中立性が損なわれ、捜査や公訴が政治により歪められる危険があるのではないかという問題だ。

 このような重要課題がコロナ危機の中で、かくも拙速に処理されようとしたのは驚きであり、理解を超える。

 そして法秩序を維持していくうえで先頭に立つべき最高位の検察官と権力を監視する役割を持つメディア関係者がコロナ緊急事態宣言下で賭け麻雀に興じたこと、それが社会に与えたインパクトを無視し緩い処分だけで終わらせ、だれも責任を取ろうとしない内閣を見るにつけ、強い苛立ちを感じる。

 強力な政権だからこのような乱暴なことが出来るということか。ここでは改めて「そもそも論」に立ち返り、問題の所在と今後のあるべき姿を解き明かしてみたいと思う。

拡大車から降りて無言で自宅に入る東京高検の黒川弘務検事長=2020年5月21日、東京都目黒区


筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総研 国際戦略研究所特別顧問(前理事長)、元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。 (Twitter@TanakaDiplomat)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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