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「政治主導」をめざした平成の統治機構改革、そこに欠けているものは何か

政治の綻びに映る「コンテスタビリティ」の重要性

田中秀明 明治大学公共政策大学院教授

官僚を使って官僚機構を抑える

 第2次安倍政権は、しばしば「安倍一強」と呼ばれる。その特徴を端的に整理すると、①これまでの政治・行政改革による制度的なガバナンス強化(総理大臣の権限や補佐体制の強化など)、②第1次安倍政権や民主党政権の失敗の学習、③自民党内のライバルの不在と野党の分裂、④官邸チームによる与党・府省のコントロール、⑤人事による統率(日銀総裁、内閣法制局長官、府省幹部など)、である。

 特に、政治主導の発揮に関わっているのが④と⑤である。

 ④を具体的に表したのが図1である。点線が囲んだのが、改革前の伝統的な自民党政権における意思決定の仕組みである。ここでは、府省の官僚と自民党の政治家(しばしば「族議員」と呼ばれる)がパートナーとなって政策を決めていた。関係業界を加えて、利益極大化を図る「鉄の三角形」が形成されてきた。

図1 安倍政権のガバナンス拡大図1 安倍政権のガバナンス

 他方、この仕組みでは、関係者の合意形成が重視されるので、新しい政策や規制緩和に族議員らが反対すると、総理大臣といえども決められなかった。そして、この政策形成において利害の調整の軸となったのが官僚である。彼らは黒子となって政治家や業界を根回しした。こうして、政策形成過程において官僚たちが大きな力を持つようになり、ときに「官僚内閣制」とまで言われるようになった。

 第2次安倍政権では、伝統的な政策決定の仕組みが維持されつつも、総理や官邸の関心事項については、官邸チームが与党や府省に指示して、政策実現に向けて調整を行う。特徴としては、「官邸官僚」と呼ばれる府省出身(現役・OB)の官僚が要所を押さえていることと、多くの経済産業省出身官僚が総理を取り囲んでいることである。民主党政権は、官僚と敵対して政権運営に失敗したが、第2次政権では、官僚機構を抑えるにはその仕組みを熟知している官僚を使うことが肝要と理解したのである。

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筆者

田中秀明

田中秀明(たなか・ひであき) 明治大学公共政策大学院教授

東京工業大学大学院及びロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院修了、博士(政策研究大学院大学)。専門は公共政策・財政学・社会保障。1985年旧大蔵省入省後、旧厚生省、外務省、内閣官房、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年より現職。主な著書に、『官僚たちの冬』(2019年、小学館新書)、『財政と民主主義』(共著、2017年、日本経済新聞出版社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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