メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「政治主導」をめざした平成の統治機構改革、そこに欠けているものは何か

政治の綻びに映る「コンテスタビリティ」の重要性

田中秀明 明治大学公共政策大学院教授

評価基準なき「適材適所」が招く忖度

 ⑤については、府省の幹部公務員制度が重要である。

 2014年に関係法律が成立した国家公務員制度改革の柱は、幹部公務員の一元管理と内閣人事局の設置である。なかでも鍵となるのが、事務次官・局長・審議官などの幹部公務員についての新しい任免システムである。幹部職員となるためには、職務遂行能力をチェックする適格性審査をクリアし、幹部候補者名簿(約600人)に記載されなければならない。この名簿の中から、具体的なポストへの任命が行われる。国家公務員法上、公務員の任命権者は大臣であるが、任命に当たり、あらかじめ総理大臣及び官房長官と協議することになった。

 政治主導のためには、部下である公務員の人事を総理や大臣が決めるのは当然と思うかもしれない。安倍政権における人事に関して、菅義偉官房長官は、「慣例のみに従って人事はやるべきでない。私は当たり前のことをやっているんです。人事は適材適所が基本方針」と述べている(「朝日新聞」、2017年2月27日)。第2次安倍政権発足以降、新聞各紙は、異例の人事、抜擢人事、幹部の更迭、女性や民間人の登用、省庁間交流など、「官邸主導の人事」が行われていることを報道している。その中には、官邸の意に沿わないとして幹部が更迭された人事も含まれている。

衆院予算委の閉会中審査で、答弁後に自席に戻る和泉洋人・首相補佐官(手前右)。左は前川喜平・前文部科学事務次官=2017年7月24日拡大衆院予算委の閉会中審査で、答弁後に自席に戻る和泉洋人・首相補佐官(手前右)。左は前川喜平・前文部科学事務次官=2017年7月24日

 正確な人事情報に基づき、「適材適所」の人事が常に行われるのであれば問題はない。しかしながら、抜擢人事と恣意的な人事は紙一重であり、適材適所を立証できなければならない。問題の根源は「適材適所」を意味する具体的な評価基準が明らかにされていないことである。

 学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に大学の獣医学部を新設する計画を巡って、前川喜平・前文部科学次官が「現在の文科省は官邸、内閣官房、内閣府といった中枢からの意向、要請について逆らえない状況がある」、「できないことをできると言わざるを得ないという状況に追い込まれている」(「朝日新聞」、2017年5月26日)と述べており、現実は、官邸が人事を握ることで、官僚たちは政治家の顔色をうかがい、忖度に走っている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

田中秀明

田中秀明(たなか・ひであき) 明治大学公共政策大学院教授

東京工業大学大学院及びロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院修了、博士(政策研究大学院大学)。専門は公共政策・財政学・社会保障。1985年旧大蔵省入省後、旧厚生省、外務省、内閣官房、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年より現職。主な著書に、『官僚たちの冬』(2019年、小学館新書)、『財政と民主主義』(共著、2017年、日本経済新聞出版社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

田中秀明の記事

もっと見る