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パスポートを返せ《前編》 外務省は理由をでっちあげ、海外取材を妨害した

国内に閉じ込められ、職を奪われた戦場記者の警鐘「すべての日本人に起こりうる」

常岡浩介 ジャーナリスト

オマーンの空港で入国拒否、日本の働きかけか

拡大イエメン取材の第1回目の計画で、経由地のオマーン・マスカット空港で入国を拒否され、出発ホールに閉じこめられた筆者=2019年1月
 1月14日。予定通り、オマーンの首都マスカットの空港に着いたが、入国を拒否された。入管関係者に調べてもらうと、データベースの入国拒否リストに私が新たに加えられたという。

 「入管の判断ではない。警察の権限による入国拒否で、不自然だ。日本大使館がオマーン警察に働きかけたようだ」と聞かされた。

拡大筆者がオマーンから日本へ送還される時に乗せられた航空会社に、オマーン当局から渡された書類。「BLACK LISTED IN OMAN」などと記されている
 2日間、空港で足止めされ、空路で日本に送還された。説明はなく、書類も渡されていない。ただ、航空会社の職員から「なぜ、日本大使館の人が来ているのか」と問われ、大使館員が様子を見にきていることを知った。

 のちに裁判で外務省は、在オマーン日本大使館の職員を空港に派遣していたことを認めた。しかし、邦人保護の義務を負うはずの大使館は私の健康状態や境遇を確認すらせず、遠巻きに見るだけで引き揚げていた。

 私は計画を練り直し、カタールからスーダン経由で、空路イエメンに入ることにした。

拡大Lightspring/shutterstock

再び計画も、羽田で出国できず

 そして、問題の2月2日、土曜日の夜を迎えた。

 羽田空港で、カタールのドーハ行きの便に乗ろうと、出国審査場の自動化ゲートを通ろうとした。機械にパスポートをかざすと、「この旅券は登録されていません」と、モニターに赤い文字が表示されてゲートが開かず、私は通過を阻止された。半月前のオマーン行きの時は問題なく通れていた。

 窓口の入管職員に相談すると、「この旅券は無効になっています。旅券返納命令が出されています」と説明された。私はここで初めて、おかしなことになっていることに気づいた。

法的根拠なくデータ消去させた外務省

拡大2019年2月に外務省に強制的に返納させられた筆者の旅券
 私が外務省から実際に旅券返納命令書を出され、強制執行されたのは、この後だ。つまり、外務省は、私に旅券返納を命ずる前に、法的根拠もなく、入管に私の自動化ゲートの登録データを消させて、移動を妨害したということになる。国にそんな権限はない。これだけでも衝撃的な違法行為だが、まだ序の口だった。

 出国審査場では、入管職員が外務省に連絡を取り、外務省の担当者とつながった電話を渡された。電話を通して、「あなたには旅券返納命令が出ている。命令に従いますか」と言われ、「拒否します」と答えた。私の認識では、違法で無効な旅券返納命令だからだ。

 以下、問題点を列挙していく。

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筆者

常岡浩介

常岡浩介(つねおか・こうすけ) ジャーナリスト

1969年長崎県生まれ。早大卒。NBC長崎放送の報道記者を経て98年からフリー。アフガニスタン、チェチェン、イラク、シリアなどで戦争・紛争地取材を続けるほか、長崎県警の内部犯罪なども追及。タリバンやイスラム国(IS)など武装組織の幹部や、ロシアの元諜報機関幹部のリトビネンコ氏ら反体制派ら、戦争に関わる世界の多くのVIPの直接取材に成功。一方で、ロシア、アフガニスタン、パキスタンなどで諜報機関や政府系組織に拉致、誘拐された経験がある。日本では北大生らの私戦予備陰謀事件に絡んで警視庁公安部に家宅捜索を受け、書類送検(不起訴)され、違法捜査だとして国賠訴訟を係争中。『ロシア 語られない戦争―チェチェンゲリラ従軍記』(2008年、アスキー新書)で平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞。自身の誘拐事件を扱った漫画作品『常岡さん、人質になる。』(11年、エンターブレイン)、単独では世界最多の3度のイスラム国取材を通して書いた『イスラム国とは何か』(15年、旬報社)なども。