規制をめざす国際的な取り組みもあるが日本はまったく無関心
2020年06月01日
金銭などの便益と引き換えに戦争に参加する兵士、傭兵は昔からヨーロッパにいた。スイス人の傭兵は勇猛果敢で知られ、それがいまでもバチカン市国を守る立場につながっている。これを範としてつくられたドイツの傭兵団が「ランツクネヒト」だ。ロシアには、コサックという傭兵がロシア帝政を長く守ってきたという歴史がある。
そして、21世紀の現在でも、民間軍事会社(Private Military Companies, PMC)とか、民間軍事保安会社(Private Military and Security Companies, PMSC)と呼ばれる「傭兵集団」がいまでも存在する。
2019年12月、キプロス沖のガス田開発をめぐる利権争いにトルコの承認する北キプロスを通じて加わろうとしているトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、リビア内戦への派兵を決めた。国連の認めるシラージュ暫定政権と東部ベンガジを拠点とするハフタル司令官の武装勢力「リビア国民軍」との対立がつづいているが、トルコは暫定政権側を支援している。
そのエルドアンは2020年2月、ロシアの国防相のセルゲイ・ショイグと参謀総長のヴァレリー・ゲラシェンコが、ロシアのPMCをコントロールして内戦でリビア国民軍を援助しているとして非難した。具体的には、「クレムリンの料理番」として知られるエフゲニー・プリゴジンが率いる「ワーグナーグループ」がやり玉に挙がった。
実は、同グループはリビアに顔を出す前にも、シリア、ウクライナ、中央アフリカ共和国でも戦闘行為や軍事教練などにかかわってきた。ウラジーミル・プーチン大統領は国防省に属する正規軍が直接関与すると国際的な非難にさらされることから、同グループなどの複数のPMCを戦闘地域などに派遣してロシア政府の権益の維持・拡大に利用してきたのである。ゆえに、2020年1月11日、プーチンはリビアにおけるロシアのPMCの関与は認めたものの、政府とPMCとの関係は否定した。
ここで、このサイトで論じた「『ロシア的人間』からみた「プーチン3.0」の本質」を思い出してほしい。この論稿のなかで、「ヴェーチェーカー」とか「チェーカー」と総称される「秘密警察」と位置づけうる機関が長く存在してきたことを紹介した。
ソ連国家保安委員会(KGB)はその「遺伝子」を受け継いでいる。ソ連崩壊後、KGBも廃止されたが、その遺伝子はロシアの連邦保安局(FSB)などに継承されている。それだけでなく、ロシアのPMCにもしっかりとその遺伝子が継承されている
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