メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

検察幹部を国会同意人事に!

検察への民主的コントロールをどう制度として実現するか

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

2.民主的コントロールの手段

(1)国民審査

 民主的コントロールの最も典型的な事例、即ち国民が要職者の適否について直接に意思を表明するケースは、憲法第79条2項に基づく最高裁判所裁判官(判事)の国民審査である。

 この制度は、一見民主的と思われるが、実際の運用上は、大きな矛盾をはらむものである。具体的には、すべての最高裁判事は任命後最初に行われる衆議院総選挙の際に、国民審査を受ける必要があるが、特に法的知識のある国民を除き、一般国民は、審査の対象となっている判事が個々の事案に審判を下してきた判決の正当性について判断する能力を持ち合わせていない。

 それにもかかわらず、総選挙の際に投票所に行くと、無理やり国民投票の投票券も渡されるので、表現は悪いが、棄権するか、いい加減な投票を強いられることになる。この制度は、罷免を是とする票が投票総数の過半数に達しない限り、罷免にならないので、棄権は罷免に反対と同様の効果になる。

 この結果、過去24回の国民審査で罷免票の平均は約10%である。また、投票者の心理として、どの候補にも罷免欄に〇をつけないと無責任のような心理状態から、リストの一番始めの候補者にのみ罷免の〇を付ける傾向にあり、毎回の投票において、その候補者が最も多い罷免票を付けられている。

 以上の通り、この制度は全く不合理であり形骸化しているが、憲法上の規定のため、実施しない選択はなく、毎回6億円という経費が実質上無意味に支出されていることになる。

 従って、幹部検察官の任免に関して国民審査を行うことは不適当であり、またそのための憲法改正などは論外であろう。

(2)内閣人事局による幹部公務員任用一元化への組み込み

 2014年の国家公務員法改正により、各省庁の幹部職員の任用は内閣人事局に一元化されており、人事局において作成される幹部職員候補者名簿の中から選ばれることとなった(国家公務員法61条の二)。しかし、独立性、中立性が要求される、人事院、検察庁及び会計検査院の幹部職員については、この規定は適用されないこととされた(同法61条の八)。

 今回政府が幹部検察官の定年延長の是非を個々の検察官ごとに判断できるように検察庁法の改正を試みたのは、もし幹部検察官の任命を他の公務員と同様に内閣人事局の一元化制度の下に置くように修正することは、独立性、中立性への真っ向からの挑戦とも受け取られるので、それは避け、63歳(検事総長は65歳)になった際の定年延長の時点で、縛りをかける方法(特例定年延長)をとったものと推測される。

 これからも分かるように、検察への「民主的コントロール」強化のために、検察官の任用を人事局の一元化制度に組み込むことは、検察庁自体も、国民一般も支持することにはならない。

拡大稲⽥伸夫検事総⻑= 2019年2⽉20⽇、東京・霞が関の法務省

(3)検察審査会及び検察官適格審査会の活用

 刑事訴訟法に基づき、事実上起訴権を独占する検察が起訴しない場合に、告訴人などは検察審査会に申し立てを行うことが出来る。

 しかしながら、11名の審査員は抽選で選ばれた一般国民であり、これが検察側の主張する不起訴の理由を論破することは容易ではない。また申立人が「起訴相当」を勝ち取るためには、11名の委員のうち8名の賛成を得る必要があって、ハードルは高い。

 また検察官適格審査会は、検察官に罷免や不適確に該当するような事実があった場合に開催されるものであり、通常の任用の場合とは関係がない。従って、この二つの審査会は、検察の民主的コントロールとは、いささか性格を異にする枠組である。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

登 誠一郎の記事

もっと見る