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政治を変える「グレタの法則」、無名の市民が瞬時に世界を動かす

コロナ禍の時代、デジタル革命迎えた日本の市民運動

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

拡大スウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさん(photocosmos1/shutterstock)

安倍政権の強硬姿勢止めたツイッターデモ、世界の中で考える

 検察庁法をめぐる安倍政権の強硬な姿勢を止めたのは、一般市民が発信した洪水のような量のツイッターだった。世界の歴史を動かす市民の力は、インターネットを使う時代に入って久しい。日本も、SNSなどネットを通したバーチャルの抗議活動が、本格的に政治状況を動かす時代に入った。

 市民の素朴な声や問題意識が、ネットと組み合わさることで別次元の力を発揮する。前世紀から、世界の各地で時代を切り開いてきた出来事を振り返り、この度の日本での「ツイッターデモ」を考えてみたい。

拡大検察庁法改正案の今国会での成立断念したことについて取材に応じる安倍晋三首相=5月18日、首相官邸
拡大国会前でハッシュタグのメッセージを書いたプラカードを掲げて検察庁法改正案に抗議する人たち=2020年5月15日

 安部政権は今回、閣議だけで検事長の定年を延長し、国会で検察庁法を変えて追認しようとした。コロナ禍の対策に全力を挙げるべきときに、自らの権力基盤の強化を目指す「不要不急」な行為だと野党は抵抗した。政権はいつものように数で押し切ろうとしたが、その意図をくじいたのは市民の力だ。

 これまでのような、街頭を埋めたリアルのデモや集会ではない。1000万を超えたと言われるツイッターの声である。かつて1960年の安保闘争の時代に、当時の岸信介首相は、「声なき声」という言葉で世論が自分を支持していると強弁したが、今や市民はインターネットにより具体的な「声」で応じた。

一人のつぶやき、一気に数百万に

拡大
 きっかけは一人の女性が5月8日に放ったツイートだった。「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグをつけた訴えに、大勢の人々が応えた。

 俳優の小泉今日子さんや歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんら多くの著名人が賛同したこともあり、瞬く間に数百万件となり、投稿数の多い「トレンド」の第1位になった。その後も新たに「#検察庁法改正案を廃案に」のツイートが投稿され、「ツイッターデモ」の継続が提起された。

 国会前で展開した抗議の市民も、手にしたプラカードや横断幕に「#検察庁法改正案に抗議します」の文字を掲げた。

コロナ禍の時代、オンラインでの新たなデモ

 コロナ禍にあって、直接、人が集まることが難しいソーシャルディスタンスの時代に、オンラインを通して広く民意を集める新しいデモの形が生まれたといえる。

 こうした動きが強気一本やりだった安倍政権の態勢内部を付き崩し、今国会での法案成立の断念をもたらした。政府は当初、「世論のうねりは感じない」(政府高官)と冷ややかだったが、世論調査で内閣の支持率が急落したのを見て公に事態を認め、態度を一変させた。

拡大検察庁法改正見送りを報じる5月19日の朝刊各紙

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) 国際ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。主著に『凛凛チャップリン』『凛としたアジア』『凛とした小国』『9条を活かす日本―15%が社会を変える』(以上、新日本出版社)、『世界を変えた勇気―自由と抵抗51の物語』(あおぞら書房)、『13歳からのジャーナリスト』(かもがわ出版)、『地球を活かす―市民が創る自然エネルギー』(シネフロント社)、『反米大陸』(集英社新書)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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