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「老人のための国」はなくても「老人のための心」はある~コロナと闘うパリで考えた

キム・ユンジョン 東亜日報パリ特派員

《訳者の解説》

 韓国では、高齢者施設のことを「療養院(요양원:ヨヤンウォン)」と呼ぶことが多い。

 私が「療養院」に抱くイメージは、食事やレクレーションを中心に提供するデイケアセンターではなく、そこで暮らす形の老人ホームに似ている。

 日本でも病院に入院したら、その病院の服をもらって着ることがあると思うが、韓国の療養院では、利用者が「病院の服」を着ている所もある。だから、一見、病院のように見えることもある。

 高級療養院は日本のそれと同じくらい贅沢で豪華であるが、一般的な療養院の多くは、雑居ビルの中にあったりすることが多い。ビルのエレベーターに乗っていて、ドアが開くといきなり療養院!ということがあるので、そこはちょっとビックリする。

 韓国に移り住んで、「病院の服の人」に驚いたことは、結構ある。歯医者さんの待合室でいきなり「病院の服の人」。街を歩いている「病院の服の人」。道でたばこを吸っている「病院の服の人」。療養院でも入院中の人でも結構病院の服のまま外に出て来る。

 とにかく、韓国も高齢化が急速に進んでいる社会。外に出てビルを仰ぎ見て療養院を探すと、それほど時間がかからず療養院の看板を見つけることができる。日本でも若いアジア系外国人が高齢者施設の労働力となっているが、韓国は中国の朝鮮族出身も多い。日本でアジアの子はお年寄りに優しいとか、お年寄りを敬うとかという話をチラホラ耳にするが、韓国でも、朝鮮族出身の人がよく面倒を見てくれるらしいと評判だ。

 我々の中にお年寄りを思う「心」はあるのか。私にはあるのか。老人のための「心」を外注してはいないか。いろいろ考えさせられるコラムであったが、自分や世間がこのまま高齢者に対して無関心であるならば、そのツケはいずれ必ず自分に回って来る。

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藏重優姫(くらしげ・うひ) 韓国舞踊講師、日本語講師。日本人の父と在日コリアン2世の間に生まれる。大阪教育大在学中、韓国舞踊に没頭し韓国留学を決意。政府招請奨学生としてソウル大で教育人類学を専攻し舞台活動を行う。現在はソウル近郊で多文化家庭の子どもらに韓国舞踊を教えている。「論座」で『日韓境界人のつぶやき』連載中。

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