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新型コロナ専門家会議の議事をすべて公開することが必要なわけ

ひとつの方向に誘導しようとする官僚の手法を改めなければ政府の会議は有害無用になる

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

公文書に対するあまりに無責任な日本政府の姿勢

 こんな話をするのは、現在の日本政府の公文書に対するあまりに無責任な姿勢にあきれ果てたからだ。

 報道によると、新型コロナウイルスへの対応を検討する専門家会議の議事録について、共同通信が政府に情報公開請求をしたところ、事務局である内閣官房による議事の概要と資料は公表されているが、各メンバーの発言を含め、そもそも議事録が作成されていないことが判明した。

 言うまでもなく、専門家の議論を記録することは、単に現在の感染症対策のために必要であるだけではない。歴史的な史料として後世に残すためである。

 2011年の東日本大震災の際、われわれは清和天皇時代の貞観地震にまでさかのぼって調べた。地震や津波の大きさはもちろん、避難方法や事後の対策や復旧のやり方まで、どこかに当時の専門家の知見や意見の記述がないか、調べ尽くそうとしたものだ。

 感染症も同じである。西洋ばかりではなく日本でも、古代に起きた感染症に関する記述が、さまざまな古文書に残っている。

 だからこそ、今回のコロナ危機に関する専門家の知見や主張などを、あまさず記録して後世に伝えることが、政府の義務であろう。ひょっとすると、いかにも「バカげた話」もあるかもしれない。しかし、そうした議論も含めてそまま伝えていくことが大切なのだ。何百年か後に同じような感染症のパンデミックが起きた場合に、それが重要な資料になるのである。

税金を使った会議の議事録は国民共有のもの

 とりわけ、今回、政府が設置した専門家会議は、国民の税金を使って運営されている“場”である。そこで何が話しあわれ、何が決められたのかを、納税者の存在を無視して、記録に残さないとは、もってのほかであろう。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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