南スーダン野球団を市民にお披露目。思わず目頭が熱く……
野球人、アフリカをゆく(29)準備は整い選手の技量も上がった、いよいよその時が
友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

NUDのプレイベントで野球紹介。観衆が続々と集まり、次第に緊張感が高まる。円陣を組んで「うまくやろうとしないで、楽しいことをアピールするんだ」と激励。(中央が筆者)
<これまでのあらすじ>
かつてガーナ、タンザニアで野球の普及活動を経験した筆者が、危険地南スーダンに赴任し、ここでもゼロから野球を立ち上げて1年3カ月が過ぎた。アメリカ帰りのピーターと出会い、女子ソフトボールも立ち上げる。一方、アフリカ野球支援をより持続的に拡大させるため、NPO法人を解散し、新たに一般財団法人アフリカ野球・ソフトボール振興機構を立ち上げた。プロ野球界、アマチュア球界、ソフトボール界の要人の参画により、ソーシャルビジネスによるチャレンジが始まろうとしていた。
【連載】 野球人、アフリカをゆく
東京都千代田区平河町といえば都内きってのお屋敷町だが、今や日本の政治経済の中心地のひとつ。永田町、紀尾井町に隣接し、オフィスビルや各種団体の会館などが多くみられる都心に近いところだ。一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)の事務所もその一角、永田町駅から徒歩3分の平河町のビルの中にある。
J-ABSの三つの目的と四人の理事
J-ABSは三つの目的を掲げている。アフリカにおける野球及びソフトボールの振興を通じ、アフリカの健全な社会の発展に貢献できる人材育成を行うこと。日本とアフリカのビジネスを含めた民間交流を推進すること。そしてアフリカの野球・ソフトボールの発展により、オリンピックの正式競技としての復活を目指すこと、だ。
この趣旨に賛同いただき、野球界、ソフトボール界から4人の方に理事になっていただいた。
プロ野球界から、楽天イーグルスのオーナー代行であり、日本プロ野球機構パリーグ理事長(2019年12月時点)も務めるビジネスコンサルタントの井上智治さん。ソフトボール界からは、元全日本女子ソフトボール代表監督の宇津木妙子さん。アマチュア野球界から、全日本野球協会国際担当理事であり、全日本女子野球連盟代表の山田博子さん。そして代表理事に私だ。
高い壁を乗り越えた発展と転機の年
年の瀬の2019年12月26日、J-ABS設立後初めての理事会が、柴田浩平事務局長の司会で始まり、冒頭に代表理事として私が挨拶を促された。
「みなさま、この度は、理事にご就任いただきありがとうございます。この財団法人は、井上さまとの出会いから話が始まりました。2003年に設立した『アフリカ野球友の会』による長年のアフリカでの活動を高く評価していただき、これをもっと発展していけないか、ということから財団を設立する話に発展していきました。
そして、宇津木さん、山田さんのご賛同、ご参画をいただき、井上さんの会社(井上ビジネスコンサルタンツ)から、立ち上げ資金や事務所スペースの提供などのご協力をいただくことで、本日を迎えることができました」
私は丁重に謝辞を述べながら、ここ数年、17年にわたり経営してきたNPO法人「アフリカ野球友の会」(アフ友)の未来が描けずにぶち当たっていた高い壁をやっと乗り越えたという思いでいっぱいだった。
アフ友の長年の課題だった継続性のある実施体制。野球界、ソフトボール界の大御所の参加。そして、柴田の事務局長就任で整ったのである。
理事会では、続いて柴田事務局長から、東アフリカの市場調査報告が行われた。柴田は、タンザニア甲子園大会のあと、ケニア、ウガンダを2週間かけて回った。民間企業や大使館、JICA事務所、そして各国野球連盟、ソフトボール連盟を訪問し、情報収集とネットワーク構築を行った。タンザニアの調査結果を含めその報告がシェアされ、予算などの運営面について協議があり、第一回理事会は1時間半で無事終わった。
2019年は、南スーダン野球が、ピーター、ウィリアム両コーチとの出会いから南スーダン野球連盟発足まで駆け上った発展の1年であり、17年間活動したアフリカ野球友の会の解散から新たな団体創設への転機の1年でもあった。