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人権そして命の収奪装置 ナチスの盛衰映す強制収容所の変容

【8】ナショナリズム ドイツとは何か/ダッハウ② 強制収容所跡を歩く

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

人間性を滅ぼす現場

 展示の序盤は、ダッハウでの強制収容所設置に至る時代背景だ。ドイツでは第一次大戦の敗北で帝政が終わり民主制のワイマール共和国が生まれるが、戦後賠償や世界恐慌への対応で政治が混乱する中、打開を唱えるナチスが台頭していく。

 1920年代後半からの失業率と、国政選挙でのナチスの得票率の急激な伸び方が似ているグラフも示され、ガイドが注意を促す。展示の土台となる戦後ドイツでのナチズム研究の蓄積を思わせる。

 ふと展示パネルから目を離して部屋を見渡すと、まさにここがそのナチズムの現場だったことに気づく。

拡大ドイツ・ダッハウにあった強制収容所の遺構にある史料館

 白を基調とした無味乾燥な天井、床、壁。窓に鉄格子。この場所は史料館の説明資料によると、連行されこのSSの管理棟に着いた人々がまず集められる「収容者移送室」の「収容者所持品管理所」だった。

 人々はここで着ている服も脱ぐよう命じられ、渡した全ての所持品がリストに記されることで、収容者として登録される。そして裸のまま隣の浴室へ進む。そちらへ私も歩いていくと、かつて浴室があった縦長のホールのような空間が広がった。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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