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ポツダム会談に冷戦の予兆 欧州秩序の再構築めぐり揺れた戦勝国

【11】ナショナリズム ドイツとは何か/ベルリン② 現代史凝縮の地

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

ナチス降伏後、最後の3首脳会談

拡大チャーチル回顧録「第二次世界大戦」。1957年、河出文庫
 ナチス・ドイツに対する反攻の主力となった米英ソの連合国3首脳による会談は第二次大戦中から、戦後処理までを視野にたびたび催された。ポツダム会談はその最後に、唯一ドイツで開かれた。ヒトラー自殺から間もない1945年5月のドイツ降伏を受けて開催を働きかけたのは、ソ連との来たるべき対立を危惧する英首相チャーチルだった。

 チャーチルの回顧録も頼りに振り返っていく。米大統領トルーマンに宛てた電報に、翌年の演説で有名になる「鉄のカーテン」に似た言葉がすでに記されていた。

 ソ連は東からポーランドを越えてベルリンを陥落させ、さらに欧州中央へ勢力を広げようとしている。それなのに米国は戦力を欧州から太平洋の対日戦へと移している――。チャーチルは懸念を示し強調した。

 ヨーロッパ中央部へこのぼう大なモスクワ進出が行われるとき(中略)、カーテンがふたたびおろされるでしょう。かくて数百マイルに及ぶ広大な帯状のロシア占領地域が、我々をポーランドから隔離することになるでしょう。(チャーチル回顧録「第二次世界大戦」 1957年、河出文庫)
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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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