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法務省が「懲戒としない」と決めた

[192]千葉県鋸南町、森法相記者会見、黒川前東京高検検事長の刑事告発……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

5月27日(水) 緊急事態宣言の解除を受けてか、NHKの朝7時のニュースをみていたら、今日からキャスターの体制を「通常に戻します」と冒頭で宣言していた。つまりレギュラー出演者とされていた2人の並びでやるというのだ。さらに、NHK内の職場でマスクをして間隔をとりながら打ち合わせをしている映像を紹介しながら、以前よりは距離をとってスタジオにいる旨、説明していた。月―金の平日レギュラー出演の場合、誰かが感染すると他方は「濃厚接触者」として感染するおそれがあるので、そのリスクを減らすための緊急対応として、どちらかがスタジオ外か、待機という形をとっていたのだ。

 僕は個人的にはそこまでやる必要があるのかなと思っていたくらいだったが、NHKや他局もそれに倣ったところも多い。それが「通常に」戻った根拠が、政府の緊急事態宣言解除というのだから、いかにも「官製メディア」の優等生らしい。

 こうした「例外状態」を目に見える形で示す意味は2つある。ひとつは、私たちテレビ放送をやっている人間も皆さんと同じように「3密」は避ける、感染防止に努めているのですよ、という一種のキャンペーンである。もうひとつの意味は、スタジオ出演が実はそれほどエッセンシャルなことではないという判断を「了解させられている」ということだ。他人事ではない。

 京都アニメ放火殺人事件の青葉真司容疑者が逮捕された。これまで大やけどを負って入院治療中だったのだが、取り調べが可能なほど回復したという判断なのだろう。この場合、逃亡や証拠隠滅の可能性は皆無なので、逮捕理由は病院での調べではなく身柄を拘置所に移したことを「公示する=さらす」以外には何があるのか。このタイミング。午前8時すぎに移送されて警察に着き、ストレッチャーに乗せられた青葉容疑者は一瞬カメラの方に視線を向けていた。マスクをしていて顔の皮膚にまだ火傷の跡が残っている。

逮捕され、ストレッチャーに乗せられて伏見署に入る青葉真司容疑者=2020年5月27日午前8時9分、京都市伏見区、20200527拡大逮捕され、ストレッチャーに乗せられて伏見署に入る青葉真司容疑者=2020年5月27日

 昼過ぎに局を出て、千葉県の鋸南町へ。コロナウイルスと災害避難というテーマで今週は展開することになったのだ。なぜ、不可解な黒川弘務前東京高検検事長辞職の継続取材をやらないのか、自分とはセンスが異なると思うしかないので、「猿回しの猿」はひとまず沈思黙考する。あらゆる取材はしっかりとやらなければならない。アリバイ取材などもってのほかだ。

 去年の秋、台風で大規模な被害を被った鋸南町の人々を訪ね歩いた。あれから8か月もたっているのにまだブルーシートが残っていた。鋸南町は台風19号では町の人口の7人に1人にあたる1060人が学校の体育館などの避難所に避難した。

台風19号の影響で、損壊した屋根を覆うブルーシートがはがれていた=2019年10月16日午後0時24分、千葉県鋸南町岩井袋、20191016拡大台風19号で大きな被害を受けた千葉県鋸南町岩井袋=2019年10月16日

 町役場によれば、コロナウイルス禍以降は、避難所も密集を避け分散化させる方針だという。だが、ウイルス禍で避難所策定の見積もり作業が進んでいないという。

 以前取材した岩井さん夫婦のお宅にうかがう。あの時は避難所でも大変な目にあっていた。こちらのことをよく覚えていてくださった。台風でダメージを食らったご自宅の修繕はまだ終わっていなかった。鋸南町はまだコロナウイルス感染確認者はゼロということだが、万が一に備えていろいろな防災避難用品を奥さんの照美さんは準備されていた。持病で悩んでいた旦那さんもお元気そうだった。

 鋸南町で最も甚大な被害が出た岩井袋地区にも足を運んだ。ブルーシートが残っていることに加えて、すでに家が取り壊されて更地になっている場所もあった。住民に話を聞くと、被災の経験がいろいろな面で教訓として生きているのがわかった。以前の取材に来た時、家の猫が不憫で避難所には行かないと言っていたご夫婦にも再会した。お元気だった。ウイルス対応も含めて国の施策へのチェック意識がきちんとしている。とにかく「遅い」と。鋸南町にはアベノマスクはまだ届いていないそうだ。

 局に戻って、近くの場所で、黒川「訓告」処分の経緯について情報収集。法務省事務次官や官房長、刑事局長らの細かな動き。検事総長および法務大臣との微妙な距離など。法務大臣は何だか「被害者」のような印象をもたれているが、とんでもない、と。ケロッとしている、と。実に面白い動きがわかった。

 夜遅く、スタッフルームに残っていた人と、ネタの選び方について議論して、ちょっと言いすぎてしまった。みんな悩みながらやっているのだ。帰宅すると、何とアベノマスクが届いていた。噂にたがわず、小さい、小さい代物だった。どうしようか。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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