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誹謗中傷だけではないもう一つの問題:新しい「検閲」

プロバイダーや政府の「権力」にどう対抗すべきなのか

塩原俊彦 高知大学准教授

 日本では、恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演中だった女子プロレスラーの木村花さんの死に絡んで、その理由がSNS上の誹謗中傷にあるとの見方から、インターネット上の発信者の特定を容易にするための制度改正が検討されるに至っている。このとき、問題になるのは、発信者だけでなく、情報発信者と情報受信者をつなげる役割を果たすインターネットサービス事業者(以下、プロバイダー)の姿勢であろう。

プロバイダー責任めぐって問題が尖鋭化する米国

拡大rafapress / Shutterstock.com

 まず、米国のケースを考えてみよう。米国では、トランプ大統領のツイートに対して、5月26日、ツイッター社は読者にファクトチェック(真偽確認)を促す警告マークを表示した。これに対して、トランプは28日、プロバイダーの責任の明確化を求める法執行命令を出した。米国ではいま、プロバイダー責任をめぐって問題が尖鋭化している。

 そもそも米国では、プロバイダーを仲介者にすぎないという見方が支配的であった(そもそもプロバイダーが仲介者なのかについては議論の分かれるところであり、この問題が次回に理論的に考察する)。1996年制定のコミュニケーション品位法(CDA)の 230条で、「双方向のコンピューター・サービスのプロバイダーないし利用者は発行者ないし別の情報内容供給者によって供給された情報の話者とみなしてはならない」と規定されている。第三者である利用者が供給する情報を広めるだけの双方向のコンピューター・サービスを提供する者、すならち、プロバイダーは話者、すなわち発信者でも表現者でもなく、仲介者にすぎないから、利用者とともに法的責任を免れることができるとされてきたのである。

 加えて、プロバイダーが発信者との関係で、その利用やアクセスを制限しても、民事責任から免責される。これは、憲法上保障されている表現でも、わいせつな表現などのアクセスや利用をプロバイダーが制限しても、民事上の責任を問われないようにすることで、表現の自由を最大限に尊重しながら、オンライン上の児童ポルノから子どもを守るために特別に設けられた規定であったのだ。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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