山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授
1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
焼き芋と「カンダバージューシー」で戦争をしのび、伝統料理で長寿食を体験
沖縄戦の組織的な戦闘が終わった日とされ、沖縄県では「慰霊の日」として祝日になっている6月23日の前後、沖縄県内の各小中学校の給食に必ず登場するメニューがある。焼き芋と「カンダバージューシー」。沖縄戦中に住民が食べていた食事を再現したものだ。
カンダバーとは、沖縄の言葉で食用甘藷の葉(カズラ)のこと。ハートの形をした、沖縄では伝統的な葉野菜で、一般家庭では戦後もしばらく、庭に咲いているものを摘んで調理していたという(つるも食べるが、芋は食べない)。
栄養価が高いことから、とりわけ戦中戦後の食糧難の時代には重宝された。私も一度、スーパーで買って食べたが、くせがなく柔らかい葉で食べやすい(つるは煮込んでも硬くて歯が立たなかった)。
ジューシーには二種類ある。一つが、硬めに炊いた「クファジューシー」で、沖縄の料理として全国的に知られている、豚の三枚肉が入った炊き込みご飯だ。もう一つが、雑炊状の「ボロボロジューシー」。カンダバージューシーは、カンダバー入りのボロボロジューシーである。
戦中は具はカンダバーのみ、味つけは海水だったという。現在の給食で出るカンダバージューシーは、カンダバーだけではなく里芋も入っており、かつお節と味噌で味つけされている。
芋とカンダバージューシーは、慰霊の日の前後だけではなく、祖先の霊を迎える「旧盆」にも食べられる。沖縄では、盆の行事を旧暦の暦にあわせて行うので旧盆と呼ぶ。沖縄戦中の食事をゆかりの日に体験することで、戦後生まれの児童にも戦争を知ってもらおうという試みだ。