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国民のため、立たないのですか!/石破茂にとことん聞いた(下)

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

日本モデル絶賛だけでは第2波に対応できない

 ――コロナウイルスの第2波が冬にも襲って来ると予想されています。それに対して、今は準備をしなければいけない時期ですね。

 例えば、医療体制の再構築です。韓国では第1波の前に既存の69もの病院をコロナ専用病棟に変えた。こうすれば感染者がたくさん出ても入院させる余裕ができるじゃないですか。そして、それによってPCR検査も十分できるようになる。こういう医療再構築とPCR検査の拡充が第2波を迎え撃つにあたって日本に最低限必要なことです。

 ところが、今のところ、そういうことに関して安倍政権はまったく音沙汰がないじゃないですか。PCR検査は基本中の基本です。しかし、私の取材では、PCR検査を拡充するには本当の政治力が必要ですが、今の体制のままでは拡充はまったく絶望的です。

 ここに歴代総理の写真が飾ってあります。(石破氏の議員事務所応接室に小さい写真が立てかけられている)田中角栄さん、竹下登さん、橋本龍太郎さん、福田康夫さん、それから写真はありませんが中曽根康弘さん。この人たちであれば絶対にやりますよ。

 でも、安倍さんではまずできないでしょう。そういう状況であるのに、石破さんは今、国民のために立たなくていいんですか。

石破 総理がこの前「⽇本モデルの勝利」というようなお話をされました。確かに国⺠はきちんとマスクを着⽤して、外出の⾃粛も我慢しながらやってきた。⼿洗い、うがいもそうです。日本国⺠がまじめに意識⾼く協力をしたことを言葉にしていただいたことは良かったと思います。でも、それだけじゃないですよね。

拡大拡大緊急事態宣言の解除について記者会見する安倍晋三首相=2020年5月25日、首相官邸

 安倍首相は5月25日、緊急事態宣言解除の記者会見で、「日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」と発言した。
 しかし、時事通信の6月6日の世論調査では、コロナウイルスに対する安倍政権の対応について60%の人が「評価しない」と答えている。安倍首相の自画自賛の言葉とは裏腹に、国民は政権の対応を冷ややかに見ている。

石破 なぜPCR検査がこれほど⾏われなかったのか。そして、なぜ欧米と比べて重篤になった⼈、死亡した⼈が少ないのか。これらについて、きちんと分析しないといけません。何か理由があるはずだ。どこで何が起こっているのかがわからないと対策が打てるはずがない。

 PCR検査を拡充するということは、もう2か⽉も3か⽉も前から総理ご自身がおっしゃっていることなのに、どうして2万件で⽌まってるんだろうか。総理もどこかに⽬詰まりがあるとおっしゃったけど、総理がおっしゃったことが実現されない行政にはやはり大きな危惧を感じます。

 「⽇本モデル」をあまりに絶賛して、冷静な科学的な分析を怠ると、第2波、第3波が来た時に対応できないんじゃないかと思う。

――その通りです。

石破 欧米に比して死亡率が低いのは⽇本だけではありません。韓国も低いし、中国自身も武漢を除けば低い水準です。インドもそう。その原因は何なんだ、どうしてアジアはこんなに低いんだという理由があるはずなんですよ。

 アジアが全般的に低いのなら、それは美しい精神論や衛生環境の話ではない、ということです。きちんと科学的な分析をやっておかないと、ウイルスが変異を遂げた時に対応できない危険性があると思います。

 PCR検査をどうしたら増やすことができるか。あるいはECMO(重症呼吸不全に対する体外式膜型⼈⼯肺)にしても⼈⼯呼吸器にしても、どうしたらきちんと⾏き渡るのか。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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