2020年06月20日
インタビューの中で石破茂氏も触れているが、同氏は1993年に一度、自民党を離党している。政治改革関連法案に賛成し、自民党内の役職停止処分を受けたためだ。
私はこのころに石破氏と知り合い、連日のように議員宿舎にお邪魔していた。論理と筋道を通そうとする姿勢はこのころも今も変わっていない。
ただ、今回のインタビューでは、何度も「今度は失敗できない」と繰り返していた。「石破、立て」という励ましの声は山ほど来ているが、「日々、正直言えば懊悩しているところなんです」と胸の内を正直に語っていた。
インタビューの中心的なテーマはコロナウイルス対策となったが、この問題に関しても石破氏の熱心な勉強ぶりがうかがえた。
コロナウイルス対策の基本であるPCR検査がなぜ広がらないのか。その構造的な原因に対する理解はほぼ正確なものだったと思う。
現在の安倍政権は、この構造的な問題に一指も触れていないだけに、第2波のウイルス襲来を前に、石破氏のような確かな知識と理解を兼ね備えた首班による、文字通り「救国政権」の登場が強く望まれる。
『自民党内、いまだに静かです!/石破茂にとことん聞いた(中)』に続くインタビューの最終回はコロナ対策の話である。
――コロナウイルスの第2波が冬にも襲って来ると予想されています。それに対して、今は準備をしなければいけない時期ですね。
例えば、医療体制の再構築です。韓国では第1波の前に既存の69もの病院をコロナ専用病棟に変えた。こうすれば感染者がたくさん出ても入院させる余裕ができるじゃないですか。そして、それによってPCR検査も十分できるようになる。こういう医療再構築とPCR検査の拡充が第2波を迎え撃つにあたって日本に最低限必要なことです。
ところが、今のところ、そういうことに関して安倍政権はまったく音沙汰がないじゃないですか。PCR検査は基本中の基本です。しかし、私の取材では、PCR検査を拡充するには本当の政治力が必要ですが、今の体制のままでは拡充はまったく絶望的です。
ここに歴代総理の写真が飾ってあります。(石破氏の議員事務所応接室に小さい写真が立てかけられている)田中角栄さん、竹下登さん、橋本龍太郎さん、福田康夫さん、それから写真はありませんが中曽根康弘さん。この人たちであれば絶対にやりますよ。
でも、安倍さんではまずできないでしょう。そういう状況であるのに、石破さんは今、国民のために立たなくていいんですか。
石破 総理がこの前「⽇本モデルの勝利」というようなお話をされました。確かに国⺠はきちんとマスクを着⽤して、外出の⾃粛も我慢しながらやってきた。⼿洗い、うがいもそうです。日本国⺠がまじめに意識⾼く協力をしたことを言葉にしていただいたことは良かったと思います。でも、それだけじゃないですよね。
安倍首相は5月25日、緊急事態宣言解除の記者会見で、「日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」と発言した。
しかし、時事通信の6月6日の世論調査では、コロナウイルスに対する安倍政権の対応について60%の人が「評価しない」と答えている。安倍首相の自画自賛の言葉とは裏腹に、国民は政権の対応を冷ややかに見ている。
石破 なぜPCR検査がこれほど⾏われなかったのか。そして、なぜ欧米と比べて重篤になった⼈、死亡した⼈が少ないのか。これらについて、きちんと分析しないといけません。何か理由があるはずだ。どこで何が起こっているのかがわからないと対策が打てるはずがない。
PCR検査を拡充するということは、もう2か⽉も3か⽉も前から総理ご自身がおっしゃっていることなのに、どうして2万件で⽌まってるんだろうか。総理もどこかに⽬詰まりがあるとおっしゃったけど、総理がおっしゃったことが実現されない行政にはやはり大きな危惧を感じます。
「⽇本モデル」をあまりに絶賛して、冷静な科学的な分析を怠ると、第2波、第3波が来た時に対応できないんじゃないかと思う。
――その通りです。
石破 欧米に比して死亡率が低いのは⽇本だけではありません。韓国も低いし、中国自身も武漢を除けば低い水準です。インドもそう。その原因は何なんだ、どうしてアジアはこんなに低いんだという理由があるはずなんですよ。
アジアが全般的に低いのなら、それは美しい精神論や衛生環境の話ではない、ということです。きちんと科学的な分析をやっておかないと、ウイルスが変異を遂げた時に対応できない危険性があると思います。
PCR検査をどうしたら増やすことができるか。あるいはECMO(重症呼吸不全に対する体外式膜型⼈⼯肺)にしても⼈⼯呼吸器にしても、どうしたらきちんと⾏き渡るのか。
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