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コロナ禍のもとでの東京都知事選 注目ポイントはここだ!

危機のリーダー小池都知事に懸念材料はないか?宇都宮健児氏、山本太郎氏の狙いは?

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

 9年前、引退が目されていた石原慎太郎東京都知事(当時)が4選出馬の表明を都議会本会議で演説したのは、2011年3月11日午後2時21分、東日本大震災が起きるわずか25分前でした。

9年前を彷彿とさせる非常時の都知事選

 危機下の選挙となったこのときの都知事選は、普段は週に2、3日しか都庁に登庁しない石原都知事が、防災服を着て連日メディアに出演したり、公務をこなしたりすることで都民の信頼を得て、圧勝を収めることに成功します。

 その後、石原都知事は衆議院議員に転身するために辞職、その後、都知事が2人連続して任期途中にスキャンダルで辞職したことから、6月18日に告示(7月5日投開票)を迎える今回の選挙は、9年ぶりに任期満了で迎える東京都知事選挙ということになりますが、都知事が防災服こそ着ていないものの、9年前を彷彿とさせるような流れになりつつあります。

 コロナ禍のもとでの選挙戦では、大規模な政治集会や多人数が集まる街頭演説を実施することは感染拡大のリスクを伴うので、選挙戦のあり方は大きく変わるでしょう、そんななか、小池都知事は連日の記者会見などでコロナ対策をアピールし、着実に都民の信頼を獲得してきました。

 感染が全国に広がったコロナ対策では、各自治体の首長のリーダーシップが問われましたが、連日のぶら下がりや記者会見への対応のみならず、時に自宅から動画メッセージを配信するなどの情報発信は、小池都知事のキャラクターが存分に発揮された活動と言えます。4年前はガラス張りの選挙カーに乗って駅前で街頭演説をするなど、“大衆劇場型選挙”を展開しましたが、今回は「安定感のある小池百合子」を演出する戦略でしょう。

都知事選への立候補を表明する小池百合子東京都知事=2020年6月12日午後6時2分、東京都新宿区

小池都知事再選に懸念材料はないか?

 では、小池都知事の再選に何の障害もないかと言われると、そうでもなさそうなのが選挙というもので、やはりいくつかの懸念材料は存在します。

 ひとつは選挙前に発売されて一躍注目の本となった『女帝 小池百合子』(石井妙子著)でも指摘されたカイロ大学卒業疑惑です。

 選挙において事実と異なる虚偽の事実を選挙の当選目的で公表した場合には公職選挙法の虚偽事項公表罪となり、罰則を持って禁じられています。ただ、カイロ大学から小池都知事が同大学を公式に卒業した事実を認めるステートメントが出たこと、この犯罪は本人が虚偽であることを認識している状態、いわゆる故意犯のみが成立することを考えれば、現実問題として「カイロ大学を卒業していない」ことを立証し、虚偽事項公表罪の適用とすることは困難ですから、この問題については、たとえ腑に落ちないところがあるとしても、選挙の焦点にすることは厳しくなったと考えます。

 もうひとつは、新型コロナウイルス感染症への対策の評価です。

 確かに東京都は、膨大な予算によって他の自治体に類をみない規模の各種経済施策を打ち出してきました。ただ、その一方で、人口比を鑑みても感染者数が多い事実や、感染者情報の情報公開に対する姿勢など、都の感染拡大防止施策が十分ではないという論調も多くみられます。

 先ほども触れたように、コロナ対策ではメディア露出や特徴のある政策を打ち出したリーダーに注目が集まっています。なかでも、元テレビキャスターとして群を抜く情報発信力を発揮し、公務での情報発信にも相応の時間を割いている小池都知事の存在感を、他の候補が上回るのは難しいでしょう。

 結局のところ、選挙戦全体を通し、公務を優先する可能性の高い小池都知事が力業で乗り切る公算が大きいでしょう。

都知事選に立候補する小池百合子東京都知事=2020年6月12日午後6時4分、東京都新宿区

挑戦者の選挙戦の狙いと展開は

 現職小池氏への挑戦者として、すでに10数人が立候補の意思を明らかにしていますが、このうち国政政党の公認もしくは推薦で出馬する見込みがあるのは、日本弁護士連合会の元会長の宇都宮健児氏、熊本県元副知事の小野泰輔氏、NHKから国民を守る党の立花孝志氏、れいわ新選組の山本太郎氏の4人です。

 小池都知事の勢いが強いなか、それぞれどのような選挙戦を展開し、ゴールをどこに設定するのでしょうか。

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