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アメリカの道義的凋落はどこまで続くのか。世界はどう向き合う?

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

アメリカの民主主義は未だ健全?

 5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで事件は起きた。白人警官が偽造紙幣使用容疑者の黒人の首を膝で押さえ窒息死させた。世界中の人が動画を見たのだが、この動画を見る限り白人警官による黒人虐待が色濃く感じられる。

 瞬く間に抗議デモが全米各地で発生し、一部では暴徒化、略奪事件も起きた。激しい抗議デモの全米への広がりの背景には、新型コロナウイルスに感染し、死亡する国民の中で黒人の割合が大きく、その理由として黒人の多くは感染予防策が十分とれない底辺の労働者であることや十分な医療が受けられないことへの鬱積した不満があると言えるのだろう。

 新型コロナがもたらしている米国社会の分断が如実に表れていると言える。

 トランプ大統領は人種差別の糾弾やデモの鎮静化を呼び掛けるよりも、これら暴徒を「アンティファ(過激派左翼)」や「テロリスト」と称し、警察・州兵による取り締まり、さらには連邦軍の出動などによる実力行使を訴えた。

拡大ホワイトハウス周辺で抗議デモに集まった人たち=2020年6月6日、ワシントン

 これに対してアメリカ社会の反応は健全であるように見える。

 世論調査では64%が抗議デモに同情すると答え(27%が反対)、実力行使を訴えたトランプ大統領の支持率は過去最低に近い38%に落ち込んだ。さらにエスパー国防長官やミリー統合参謀本部議長は連邦軍の使用は憲法違反の恐れがあるとして懸念を表明した。共和党GWブッシュ大統領を含む歴代大統領は人種的平等性を求める抗議声明に名を連ねた。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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