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野党再編の鍵を握るのは、コロナ対策の実務経験を持つ自治体の首長たちだ 

連合は小池知事支援、立憲民主とれいわは対立激化~都知事選後の野党再編は必至

中島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

 今、注目している自治体の首長が二人いる。大村秀章・愛知県知事と保坂展人・世田谷区長である。

 二人はそれぞれの地域行政の場で、新型コロナウイルス対策に成果を出してきた。大村氏は「知事」。保坂氏は「区長」。同じ地方自治の現場のリーダーだが、権限や位相が異なる。当然、知事の方が包括的な判断を迫られ、区長の方が具体的な現場の詳細に関与する。経験の内容が異なる。

 この二人の経験値を共有し、次の第二波、第三波への指針を明示することには重要な意味があると考えた。そこで、お二人に対談をお願いし、実現したのが、論座で6月21日公開された『本物のコロナ対策はこれだ! 大村秀章・愛知県知事×保坂展人・世田谷区長』である。

拡大保坂展人世田谷区長(左)と大村秀章愛知県知事

 二人の実務プロセスから明らかになったのは、以下のプロセスの重要性である。

① PCR検査強化によって患者を早期発見すること
② 医療機関の収容可能人数などを調整し、可能な限り早く適切な医療につなげること
③ 医療機関内で院内感染を起こさないための対策を徹底すること
④ 軽症患者に対してはホテルなどを用意し、感染拡大と医療崩壊の両面を防ぐこと
⑤ 情報公開を徹底し、現状を住民に伝えること
⑥ コロナ禍で経営難に直面する医療機関を金銭的に支えること

 大村知事が力を入れたのが②の医療機関の調整だった。一方、保坂区長の証言で明らかになったのは、「東京都が行うはずの入院調整機能が動か」なかったという実体である。PCR検査の拡大も、東京都では遅れた。「座して待ってはいられない」と考えた保坂区長は、世田谷区独自でPCR検査の拡大体制を整えた。

 愛知県では、医療崩壊が起きていない。一方で、東京都では医療機関がパンクした。


筆者

中島岳志

中島岳志(なかじま・たけし) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科でインド政治を研究し、2002年に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)を出版。また、近代における日本とアジアの関わりを研究し、2005年『中村屋のボース』(白水社)を出版。大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞する。学術博士(地域研究)。著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社)、『パール判事』(白水社)、『秋葉原事件』(朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄』(岩波書店)、『アジア主義』(潮出版)、『下中彌三郎』(平凡社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『保守と立憲』(スタンドブックス)、『超国家主義』(筑摩書房)などがある。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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