連合は小池知事支援、立憲民主とれいわは対立激化~都知事選後の野党再編は必至
2020年06月22日
今、注目している自治体の首長が二人いる。大村秀章・愛知県知事と保坂展人・世田谷区長である。
二人はそれぞれの地域行政の場で、新型コロナウイルス対策に成果を出してきた。大村氏は「知事」。保坂氏は「区長」。同じ地方自治の現場のリーダーだが、権限や位相が異なる。当然、知事の方が包括的な判断を迫られ、区長の方が具体的な現場の詳細に関与する。経験の内容が異なる。
この二人の経験値を共有し、次の第二波、第三波への指針を明示することには重要な意味があると考えた。そこで、お二人に対談をお願いし、実現したのが、論座で6月21日公開された『本物のコロナ対策はこれだ! 大村秀章・愛知県知事×保坂展人・世田谷区長』である。
二人の実務プロセスから明らかになったのは、以下のプロセスの重要性である。
① PCR検査強化によって患者を早期発見すること
② 医療機関の収容可能人数などを調整し、可能な限り早く適切な医療につなげること
③ 医療機関内で院内感染を起こさないための対策を徹底すること
④ 軽症患者に対してはホテルなどを用意し、感染拡大と医療崩壊の両面を防ぐこと
⑤ 情報公開を徹底し、現状を住民に伝えること
⑥ コロナ禍で経営難に直面する医療機関を金銭的に支えること
大村知事が力を入れたのが②の医療機関の調整だった。一方、保坂区長の証言で明らかになったのは、「東京都が行うはずの入院調整機能が動か」なかったという実体である。PCR検査の拡大も、東京都では遅れた。「座して待ってはいられない」と考えた保坂区長は、世田谷区独自でPCR検査の拡大体制を整えた。
愛知県では、医療崩壊が起きていない。一方で、東京都では医療機関がパンクした。
二人の首長は、連日の激務の中、神経をすり減らしながら、変化に応じた状況判断を行ってきた。これまで経験のない事態に直面した現場は、試行錯誤しながらも最適解を模索し、懸命な努力を続けてきた。そこで得られた経験値は何にも変えがたいレガシーである。これを何としても第二波、第三波に生かさなければならない。
コロナ対策のリアリティに政治家として直面してきたのは、全国の首長たちである。国会中継を見ていて歯がゆい思いをしたのは、リアルな現場と国会で議論されている内容の乖離である。
国民がいま何に苦慮し、現場でどのような具体的課題が浮上しているのかを、国会議員たちはリアルタイムで把握できていない。どうしてもタイムラグが生じる。現実は国会討論を追い越し、取り上げられた頃には、次の段階へとシフトしている。国会が現実から取り残される。そんな事態が、連日生じていた。
第二波、第三波への対応が迫られる今後の国政には、どうしても首長の経験値が必要不可欠である。彼ら・彼女らの実務経験が国政に生かされるルート作りが早急に求められる。彼らの参与なしには、的確な対策を採ることが出来ないだろう。
一方、政府を追及すべき野党は、混乱が続いている。
立憲民主党と国民民主党の合併は、幾度となく頓挫している。その原因は、政策論やヴィジョンの違いよりも、人間関係のもつれの方が大きい。
今回の東京都知事選挙においても、旧民主党の最大支持母体の連合東京が、6月17日の執行委員会で、現職の小池百合子知事の支持を決めた。自主投票ではない。小池知事支持である。
このような流れを受けて、国民民主党は自主投票となったが、実質的には小池支持という側面が強い。肝心の立憲民主党と国民民主党で対応が割れた現実を重く受け止める必要がある。
このような足並みの乱れに、国民はうんざりしている。安倍内閣を長期化させた最大の原因は、野党が魅力的な「もう一つの選択肢」と見なされていないことにある。希望あるヴィジョンと実行可能な政治勢力の存在を提示できないことが、安倍長期政権をアシストしている。
そんな国民のいらだちを受け、台頭してきたのが山本太郎・れいわ新選組代表である。
山本代表は、消費税廃止という明快な政策を打ち出し、れいわ新選組は参議院選挙で二議席を獲得した。現在、東京都知事選挙に立候補し、「東京オリンピック・パラリンピック中止」や「総額15兆円でコロナ損失の底上げ」、「失業者対策として都の職員3000人増員」、「低廉な家賃で利用できる住宅を確保」などの政策を掲げて闘っている。
私は山本代表に新たな政治の胎動を感じ、その動向を注目してきた。彼が掲げる消費税減税にも賛成だ。
しかし、懸念もある。何と言っても、行政経験がない。
山本代表だけで国政・都政をコントロールできるほど、政治は甘くない。日々、予想外のことが起きる。その一つ一つに冷静に対応するためには、やはり経験値が必要である。行政を任せられる勢力になるためには、実務経験が豊富なパートナーがどうしても必要である。
れいわ新選組には国会議員や次の選挙の候補者たちがいる。それぞれが個性的な人材だ。参議院議員になった木村英子氏、船後靖彦氏の活躍は大きな成果を生み出した。しかし、若い政党であるが故に、経験値の蓄積は浅い。
本来であれば、旧民主党の経験豊富な議員たちが、山本代表と連帯し、安倍内閣とは異なるヴィジョン・政策を打ち出すべきである。野党に必要なのは、①「選択肢となり得る魅力的なヴィジョン・政策」と②「政権を任せられるという安心感」である。
山本氏は①の提示に成功している。しかし、②を欠いている。旧民主党議員たちは、②を担わなければならない。しかし、仲間割れを繰り返し、政権陥落から約7年半経っても、勢力をまとめきることが出来ていない。民主党政権の失敗も相まって、彼らに対する「安心感」や「信頼感」が空洞化しているというのが現状だろう。
旧民主党勢力が一致団結し、山本氏のパートナーとなることは、現状では難しい。立憲民主党や国民民主党の支持率の低迷を見れば、そこに期待が集まっていない現状が浮かび上がる。
代わって期待を集めつつあるのが日本維新の会であり、吉村洋文・大阪府知事である。
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