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野党再編の鍵を握るのは、コロナ対策の実務経験を持つ自治体の首長たちだ 

連合は小池知事支援、立憲民主とれいわは対立激化~都知事選後の野党再編は必至

中島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

首長の実務経験を国政に生かすルート作りを急げ

 二人の首長は、連日の激務の中、神経をすり減らしながら、変化に応じた状況判断を行ってきた。これまで経験のない事態に直面した現場は、試行錯誤しながらも最適解を模索し、懸命な努力を続けてきた。そこで得られた経験値は何にも変えがたいレガシーである。これを何としても第二波、第三波に生かさなければならない。

 コロナ対策のリアリティに政治家として直面してきたのは、全国の首長たちである。国会中継を見ていて歯がゆい思いをしたのは、リアルな現場と国会で議論されている内容の乖離である。

 国民がいま何に苦慮し、現場でどのような具体的課題が浮上しているのかを、国会議員たちはリアルタイムで把握できていない。どうしてもタイムラグが生じる。現実は国会討論を追い越し、取り上げられた頃には、次の段階へとシフトしている。国会が現実から取り残される。そんな事態が、連日生じていた。

 第二波、第三波への対応が迫られる今後の国政には、どうしても首長の経験値が必要不可欠である。彼ら・彼女らの実務経験が国政に生かされるルート作りが早急に求められる。彼らの参与なしには、的確な対策を採ることが出来ないだろう。

都知事選での野党の混迷

 一方、政府を追及すべき野党は、混乱が続いている。

 立憲民主党と国民民主党の合併は、幾度となく頓挫している。その原因は、政策論やヴィジョンの違いよりも、人間関係のもつれの方が大きい。

 今回の東京都知事選挙においても、旧民主党の最大支持母体の連合東京が、6月17日の執行委員会で、現職の小池百合子知事の支持を決めた。自主投票ではない。小池知事支持である。

 このような流れを受けて、国民民主党は自主投票となったが、実質的には小池支持という側面が強い。肝心の立憲民主党と国民民主党で対応が割れた現実を重く受け止める必要がある。

拡大東京都の小池百合子知事

 このような足並みの乱れに、国民はうんざりしている。安倍内閣を長期化させた最大の原因は、野党が魅力的な「もう一つの選択肢」と見なされていないことにある。希望あるヴィジョンと実行可能な政治勢力の存在を提示できないことが、安倍長期政権をアシストしている。

 そんな国民のいらだちを受け、台頭してきたのが山本太郎・れいわ新選組代表である。


筆者

中島岳志

中島岳志(なかじま・たけし) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科でインド政治を研究し、2002年に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)を出版。また、近代における日本とアジアの関わりを研究し、2005年『中村屋のボース』(白水社)を出版。大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞する。学術博士(地域研究)。著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社)、『パール判事』(白水社)、『秋葉原事件』(朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄』(岩波書店)、『アジア主義』(潮出版)、『下中彌三郎』(平凡社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『保守と立憲』(スタンドブックス)、『超国家主義』(筑摩書房)などがある。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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