三輪さち子(みわ・さちこ) 朝日新聞記者
2006年、朝日新聞社に入る。横浜、徳島総局を経て2011年から政治部。民主党政権では事業仕分け、自民党政権では自民党幹事長番、防衛省などを担当。2017年から世論調査部。オピニオン編集部を兼務。関心のあるテーマは虐待・貧困などの「子どもをめぐる問題と政治」。趣味はカバン作り。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
立憲民主党は「枝野私党」を卒業し、消費税5%をのみ込み、政権の受け皿をつくれ
岡田 宇都宮さんが山本さんの票を下回った場合、都市部の立憲支持層が溶解するかもしれません。終わりの始まりとも受け止められかねない。私は政党は「道具」だと思っているので、立憲民主党の組織防衛や、野党第一党の権威なんてまったくどうでもいいと思っています。だから、リベラルの選択肢を守り抜くため、三顧の礼を尽くして一本化をお願いすべきだったと私は思います。枝野さんは書生みたいなことを言っていないで、土下座も辞さない覚悟で一本化を調整するべきでした。もう遅いかもしれないけれど。
野党が内輪もめを続けていれば、安倍政権に変わる「受け皿」になり得ない。岡田氏は著書で、優先順位を明確にし、優先すべきもののために野党はまとまれ、つまりちゃんと“政治”をやれ、と書く。それができないのは子どもであり、まともな政治ではないと言う。なぜ野党はまとまれないのか。
岡田 今日の立憲民主党の現状をどう見ていますか。
小川 立憲民主党にかぎらず、野党はすさまじい遠心力が働いています。山本太郎さん、前原誠司さん、馬淵澄夫さん、山尾志桜里さんがそれぞればらばらに動いていく。そして日本維新の会、国民民主党、共産党、社民党がいる。カオスだ。まるで応仁の乱。昔から、左派の内ゲバとはいいますが、右派の内ゲバは聞いたことがないのですが……。
岡田 あまりないですね。
小川 私は民進党末期に前原代表を近くで支える立場にいましたので、希望の党の顚末には責任があります。ただ、あのとき、枝野さんが立憲民主党を打ち立てたことは大きな政治的功績です。しばらくは枝野さんの独裁が、党内で正当性を持つ状況でした。しかし、言葉遣いには気をつけなきゃいけませんが、立憲民主党はいまだに枝野私党です。
岡田 まったくその通り。
小川 だから国民的な公党に脱皮できるかが問われています。保守系の人は祖父や父から地盤を受け継いで自然に政治家になっている人が多い。一方、リベラルの人は相当のものをかなぐり捨てて飛び込んでいる。それだけに安易な妥協をしません。ここが課題です。どうすべきなのか。
小さな成功体験を紹介させてください。私は党の厚生労働部会長として、PCR検査の体制を拡充する議員立法を出すための意見集約をしました。賛成、反対で意見が割れ、暗礁に乗り上げました。旧民主党のように延々と議論するやり方もありましたが、多くの議員は執行部に一任して退席し、残った議員だけで膝詰めで議論しました。私からは「自分の言いたいことは半分、残り半分は相手のことを聞いてくれ」と訴えました。1時間で収束し、法案提出につながりました。
何が言いたいか。基礎的な意見集約の作法をたたき込むことで、左派の内ゲバやリベラル同士の妥協しがたい文化を乗り越えられる可能性があるということです。結局はリーダーの問題なんです。