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「人種差別の怒りの渦」に垂れ込める「不安」という名の暗雲

花田吉隆 元防衛大学校教授

1968年の状況に似る、漠然とした不安

 2020年の今、状況は1968年に似てなくもない。

 無論、キング牧師は全国に名の知れた人種差別撤廃運動指導者で、今回の被害者に比すべくもない。そもそも今、ベトナム戦争のような、国論を二分する戦争があるわけでもない。当時、米ソ冷戦が先鋭化していたが、今の米中新冷戦がそれに比するわけではない。オバマケアを行き過ぎとみる向きはあるが、公民権運動の時の比ではない。財政赤字と貿易赤字は増加中だが、失業は、少なくともコロナ前まではかつてないほどの低水準で推移していたし、株価は空前のブームだった。米国の存在感低下は著しいが、それは米国の国力低下というより、大統領の威信低下によるものだ。

 問題は、米国は誤った方向に進んでいるのではないか、という漠然とした不安だ。この辺りは1968年当時の状況に似る。

 白人中間層がバタバタ没落していく。かつての成長を担った、米国スピリットの中核ともいえる層が社会の底辺に落ちこぼれていく。自助の精神を体現し、勤勉に働いてきたこの国の支柱が次々と職を失っていく。こういうことがあっていいのか。何かおかしいのではないか。

 我々は、勤勉に働いた金で税を納めているが、それは怠惰な黒人を救うためではない。北東部エスタブリッシュメントは進歩主義をまき散らし、

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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