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イージス・アショア導入停止問題 安倍首相会見にみる三つの欺瞞

検証なき「責任」、唐突な「安保戦略議論」、中国隠し……ごまかしはもう止めよ

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

どさくさの「安保戦略議論」

 二つ目の欺瞞はまさにその、いまなぜ「安全保障戦略の新たな方向性を打ち出す」のかという理由だ。

 安倍首相は記者会見で、日本の安全保障に関する具体的な情勢として一言だけ、「朝鮮半島ではいま、緊迫の度が高まっています」と語った。北朝鮮が最近、韓国を敵視する姿勢を強め、境界線に近い開城の交流拠点「南北共同連絡事務所」を爆破するなどしている問題だ。

拡大

 しかし、これもちょっと待ってほしい。

 7年半にわたる今の安倍内閣の間に、北朝鮮は核実験やミサイル開発を加速した。その対策として導入が決まったのがイージス・アショアだ。導入を停止し、かつ最近の日本の安全保障をめぐる懸念としてこの「朝鮮半島の緊迫」を持ち出すなら、それこそ風呂敷を広げる議論をしている暇はないはずだ。

 そして、少し引いて考えれば、確かに今の北朝鮮と韓国の間の緊張は深刻だが、日本にすればアショア導入を決めた2017年末にかけての頃の比ではない。当時は、米国と対立を深める北朝鮮が在日米軍基地を標的として示唆し、日本周辺へ繰り返しミサイルを発射。各地で防災無線からJアラートが鳴り響き、避難訓練も行われるほどの状況だった。

拡大2017年7月のミサイル避難訓練で、教室の隅に集まり身を守る小学生ら=富山県高岡市の伏木小学校。朝日新聞社

 つまり、「安全保障戦略の新たな方向性を打ち出す」議論をいまわざわざ始める理由として、最近盛んに報じられる「朝鮮半島の緊迫」は一見わかりやすいが、実はあまりに弱すぎる。アショア導入停止という失態で国民の不信を招きながら、なおも国民に本音を隠して議論を進めようとする欺瞞が、そこにある。

 では、本音は何なのか。会見での質問に対する安倍首相の答えにちらりと現れた。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

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