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「コロナ世代」だけじゃない、見えてきた大学の光と影

スマホでオンライン授業でいいのか ボーダーフリーな大学の可能性を探る

石垣千秋 山梨県立大学准教授

大学全入時代の課題

 18歳人口が大学に全入可能になり、マイナスイメージのラベルを貼られた大学群がある。それが、全入が可能な「BF(ボーダーフリー)大学」、より広くは「Fランク」と呼ばれる大学群だ(予備校が名付けたといわれる)。

 このような大学の中には、1990年以前の大学とは別な意味で学習意欲の低い学生、基礎学力の低い学生が籍を置く。日常の授業において常用漢字の読み書きができない、教員がかみ砕いて話す日本語が十分理解できない、四則計算ができなといった問題を抱える学生もいる。

「コロナ世代」だけじゃない、見えてきた大学の光と影拡大イメージ写真/smolaw/Shutterstock.com

 こうした問題を論じる際に、上野俊哉氏が『現代思想』2015年11月号(青土社)の「人文系BF私大を再活性化するためのいくつかのアイディア」の中で、「今の大学のキャンパスでもっと強調していいことは、知っているべき何かを知らないことは恥ずかしいことだという感覚、無知を恥じる感性かもしれない」と指摘していたことを付記しておきたい。かつて大学という堅固で巨大な構築物の中で、物を知る多くの人に囲まれて自分の知識、能力の無さに立ちすくんだような感覚は、こうした大学の中では起きないだろう。

 このような大学でも、学費は決して低いわけではない。むしろ伝統と実績がある有名私学よりも高額な場合がある。そうであっても、「全入時代」だからこそ、大学卒業という学歴がないことで不利益を受けるということを懸念する保護者などが、場合によっては本人の意欲に反して、授業料と生活費を工面し、学生自身がアルバイトで学費をも賄うことでこうした大学に進学しているのだ。しかし、多くの時間をアルバイトに費やす結果、学修成果が乏しい学生も少なくない。

「コロナ世代」だけじゃない、見えてきた大学の光と影拡大イメージ写真/paikong/Shutterstock.com

大学が面倒見の良さを強調する背景

 私立大学ではかなりの割合の学生を一般入試ではなく、推薦入試で選抜しているところもある。定員を充足していない大学は、30%を超える(日本私立学校振興・共済財団、2018年)。

 大学は学生を獲得するため、こうした学生たちに対して担任制など教職員による懇切丁寧な対応、高校まで以上の面倒見の良さ、これまでの学力や生活態度の改善・向上をうたい、保護者の期待を高める。対人関係に問題を抱える学生も多く、欠席が続く学生への対応に、こうした大学の勤務する教員は担任として本人や保護者への連絡を取り、時にはメンタル系の医療機関を紹介し、友人関係の調整にも対応している。

 当然、こうした大学の学生は「お客様」として扱われる。実際、筆者がかつて勤務したある大学の学生要項にも「大学は高校とは違います。皆さんはお客様です」と書かれていた。

 教員がサービスを提供する側にあると認識している学生に対して行う授業は、授業時の「着席指導」をいかに効率的に行うかが、90分授業を無事実施できるかどうかの分かれ目となる。他大学では、複数の教員が私語のやまない教室に出向き、授業中休みなく机間巡回をするというところもある。まさに、飛行中の機内で客室乗務員が、通路から左右の座席の乗客の様子に目配りするような状態である。

 入学時の学力に問題を抱えていても、辞書のひき方、四則計算、英語の基礎などから始まるリメディアル教育が充実し、大学を卒業するまでに一定水準の学力の獲得が可能な大学もある。しかし、大学の教員は、高等学校までの学校の教諭とは異なり、学習指導要領を把握し、その内容の指導方法について訓練を積んできたわけではなく、そうしたカリキュラムが充実した大学や教員に巡り合う学生は幸運である。

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筆者

石垣千秋

石垣千秋(いしがき・ちあき) 山梨県立大学准教授

石川県生まれ。東京大学卒業後、三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)勤務、バース大学大学院(英国)、東京大学大学院総合文化研究科を経て2014年博士(学術)取得。2017年4月より山梨県立大学人間福祉学部准教授。主著に『医療制度改革の比較政治 1990-2000年代の日・米・英における診療ガイドライン政策』(春風社)。専門は、比較政治、医療政策。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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