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新型コロナ対策で攻めの韓国――K防疫は経済を止めない

伊東順子 フリーライター・翻訳業

クラスター発生に動じない

 もちろん、韓国とて完全に感染を抑え込んだわけではない。5月の連休明けから始まった、首都圏でのクラスター発生は今も続いている。

 「お願いだから、ちょっと黙っていてと思いました。あの人が何か言うと感染爆発が起こる」

 仕事つながりの韓国女性がため息まじりに「あの人」と言ったのは文在寅大統領のことだ。

 「我々は防疫において世界をリードする国になった。K防疫は世界の標準となった」

 5月10日の就任3周年スピーチは、勝利感にあふれたものだったが、人々は少々困惑していた。月末に「新規確診者(新規の確定診断者。韓国では感染者という言葉は使わない)ゼロ」を達成した韓国だったが、連休明けと同時に「夜の街」でのクラスターが発生していたからだ。

ソウルの繁華街・梨泰院にあるクラブ。ここでクラスターが発生した=東亜日報提供  拡大ソウルの繁華街・梨泰院にあるクラブ。ここでクラスターが発生した=東亜日報提供

 大統領が言う「K防疫」とは韓国の新型コロナ対策のことである。K-popやK文学などと同じKoreaのKを頭につけている。ドライブスルー方式の検査や韓国製検査キットなどが海外で活躍し、また韓国の感染対策も評価されているのだから、それを国家的ブランドとして売り出すのは悪い戦略ではないだろう。一方で、人々が少々困惑したのもわかる。トラウマがあるからだ。あの悪夢の2月半ば、あの時も「新規確診者ゼロ」が続いていたのに、大統領が収束宣言を出すと言った矢先に、大邱で宗教団体発の感染爆発が起きた。

 もうああいうのはこりごり――そうは言うものの、大邱の時とは違い、今の韓国の人々はとても落ち着いている。

 「油断したらダメってことですね。でも、まあ、心配なら検査してもらえばいいし」

 安心の背景には

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

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