いつものように「説明責任」を果たさない首相だが、今回は逃げられない
2020年06月25日
河井克行・前法相、河井案里参院議員夫妻の逮捕を受け、安倍晋三首相は18日の記者会見で次のように述べた。
「かつて、法務大臣に任命した者として責任を痛感している。国民の皆さまに深くおわび申し上げます」
肝心の首相自身の任命責任について問われると、「総裁として自民党においていっそうエリを正し、説明責任を果たしていかなければならない」としたうえで、「それ以上については捜査中の個別の案件に関すること」と言及を避けた。
首相として、自民党総裁として、任命責任を認めてお詫(わ)びをし、それで一件落着とする。これまで幾度もみせられてきたその手法に、有権者はさすがにうんざりしているようだ。ここにきて、メディア各社の世論調査で内閣の支持率が下がり、不支持が目立つのはそのためだろう。
6月21日に発表された毎日新聞の調査では、河井夫妻の逮捕について、安倍首相の責任は「重い」という回答が59%に達し、「重いとは言えない」の32%を大きく上回った。また、22日発表の共同通信の調査では、「河井事件」について首相の責任があるという答えが75.9%に達した。
森友・加計学園の問題、「桜を見る会」をめぐる疑惑、そして今回の河井夫妻の逮捕で、首相が「逃げている」という評価が定着すれば、まだまだ進行中の新型コロナウイルスへの対応においても、国民からの協力が弱まらざるを得ない。「説明責任」を十分に果たさないから、追及されるのを恐れて国会の会期も延長しないと見られてしまう。
かねてから私は、政治家の責任の取り方は、出処進退に関わるものと受け止めている。「閣僚報酬の3カ月返上」というようなものもあるが、こんな痛くもかゆくもないやり方では、責任をとったとはとても言えない。
与野党を問わず、多くの政治家が議員辞職や辞任というかたちで責任をとらざるを得なくなったことがある。昭和の末期、1988年6月に発覚した「リクルート事件」である。首相、閣僚をはじめ、与野党の政治家、官界、言論界までを巻き込んだ大事件でその後、平成の政治改革へとつながった。
当時、竹下登内閣で大蔵大臣、副総理をつとめていた宮沢喜一氏は、本人ではなく秘書が秘書名義で未公開株の譲渡を受けていた。その頃、私は初当選後またもや落選し、復活を期して選挙区まわりをしていた。
ある日、友人の加藤紘一氏が電話をしてきた。「宮沢さんの出処進退はどうすればよいか」と聞く。彼はその頃、宮沢派(宏池会)の“プリンス”といわれる存在。同派の落選者からも広く意見を聴いているということだった。
私が「できる限り早く閣僚を辞任していただきたい」と言うと、彼はしばらく黙り、「自分が株を譲渡されたわけではないのに、なぜ辞める必要があるのか」と尋ねた。私は言った。
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