「新しい検察庁法改正案」はかくあるべし
副検事の立場への配慮ならびに検察官適格審査会の活用を
登 誠一郎 元内閣外政審議室長
今年の通常国会の最大の与野党対決法案となった検察庁法改正案は、数百万回を超えるツイートというネット上の反対運動、改正法案に反対する松尾邦弘元検事総長ら10数名の有力検察庁OB及び熊崎勝彦元東京地検特捜部長ら30数名の特捜検事OBによる意見書の提出、さらには渦中の黒川東京高検検事長の賭けマージャンによる辞職、と異例づくしの経過を経て、6月中旬の国会閉会に伴い廃案となった。
政府・与党は同法案中の定年延長の特例規程等一部を修正の上、再度、国家公務員法改正案との抱き合わせで次の国会に再提出する考えと伝えられている。しかしその具体的検討状況は明らかにされておらず、また6月末に森雅子法相が突然提案した「法務・検察行政刷新会議」の議題・メンバーも不明のままである。
検察庁法改正案をめぐる問題は、安倍内閣の支持率を政権発足以来最低の水準である30%以下に下落させたように、国民の関心が極めて高いものであるので、現在進行中の河井前法相夫妻の公職選挙法違反事件の捜査と立件の進捗状況とも相まって、政権の検察制度についての基本的な対応ぶりには目が離せない。
そこで本稿においては、今回の一連の騒動の発端に立ち返って、何が問題であるのかを改めて吟味し、その対処法を考えることにより、今後の検察庁法のあるべき姿について提案したい。

⾞から降りて無⾔で⾃宅に⼊る東京⾼検の⿊川弘務検事⻑=2020年5⽉21⽇、東京都⽬⿊区