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「新しい検察庁法改正案」はかくあるべし

副検事の立場への配慮ならびに検察官適格審査会の活用を

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

なぜ検察官の定年延長を議論する必要があるのか?

 現在の検察庁法によると、検察官の定年は63歳(検事総長のみ65歳)であるが、昨年想定されていた改正案の原案においても、また、その後に修正されて国会に提出された改正法案においても、①すべての検察官の定年は65歳とされ、②次長検事、検事長及び検事正は63歳に達した翌日に検事(即ちヒラの検事)に任命される、となっていた。これは具体的に何を意味するのであろうか。

 まず、①の点について見ると、これは、今後、年金受給時期が漸進的に遅くなることに応じた国家公務員の定年延長に合わせたものと説明されているが、ひとくくりに検察官といっても、定年後の生活保障は、検事と副検事では雲泥の差がある。

 検事(定員約1900名)は、定年後は弁護士、公証人、企業の顧問や社外取締役などとして、総じて安定した収入が確保されている(いわゆるヤメ検)。これに比して、ほとんどが司法試験合格者ではない副検事(定員約900名)は、定年後は一般公務員と同じく再就職はそう容易ではないので、国家公務員並みの定年の延長が望まれる次第である。

 これの意味するところは、定年延長が必要なのは、副検事であって、検事にとっては定年延長はほとんど恩恵もなく、あまり関係のない制度変更である。因みに、検察庁職員総数の4分の3を占める検察事務官の定年は、国家公務員の定年延長に伴い、段階的に65歳に延長される。

 次に②の点については、次長検事、検事長、検事正といった幹部が63歳以降もそのポストに留まることは、人事の停滞を招くことになるので、63歳になったら、その後の2年間はヒラ検事として働くという制度である。

 しかし、これは現実的な制度とは到底思えない。63歳で退官すれば収入の良い再就職口が待っている幹部検察官で、この制度を利用して、ヒラ検事に戻ってあと2年間働く人がいるであろうか? 筆者の友人のほとんどの検察官OBは、これは無意味な制度変更であると述べている。

拡大oasis2me/Shutterstock.com

 以上総合すると、検察庁法22条の検察官の定年に関しては、検事総長は65歳、それ以外の検事は63歳の現行通りとし、副検事のみ2年延ばして65歳とすることが適切である。

 なお改正法案の様に、すべての検察官の定年を65歳とすることは、人事の停滞を防止するために役職定年制度が必要となり、それが別の不都合を生じるので、避けることが望ましい。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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