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米国の警察改革を日本への警鐘とせよ:顔認証システムの危険性

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年5月27日、米ミネソタ州で警官によって殺害された黒人、ジョージ・フロイドさんをめぐるスキャンダルは法執行機関たる警察のさまざまな改革を求める運動に弾みをつけている。

 警察が顔認証システムを利用して、容疑者逮捕などに安易に活用する動きにも反省が広がっている。6月8日に米民主党議員が下院に提出した「2020警察正義法案」では、顔認証を警官がリアルタイムで利用するボディ装着機に組み込むことが禁止されている。日本人にとって対岸の火事にしか見えないかもしれないが、日本にとっても顔認証システムの利用規制が喫緊の課題であることを明らかにしたい。

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相次ぐ顔認証技術利用の抑制

 IBM、アマゾン、マイクロソフトが相次いで興味深い発表を行った。まず、6月8日、IBMの最高経営責任者(CEO)、アルヴィンド・クリシュナは人種にまつわる「正義改革」に関する国会議員向け書簡を公開した。

 そのなかで、IBMは大量監視、人種のプロファイリング、基本的人権や自由の侵害などに向けた、顔認証技術を含むいかなる技術にも反対し、その利用を容赦しないと明記している。加えて、「顔認証技術が国内法執行機関によって利用されるべきかや、どのように使われるべきかに関する国民的対話をいまこそはじめるべきときである」とまでのべている。もちろん、IBMは顔認証分野から撤退する。

 ついで、アマゾンは6月10日、同社の顔認証技術の警察による利用について1年間の一時停止を実施すると発表した。そのなかで、行方不明の子どもを探すために一部の機関がアマゾンのRekognitionという製品を利用することは認めるとした。他方で、「1年の一時停止が適切なルールを履行するための時間を議会にあたえることを望む」とのべている。

 ただし、アマゾンについてはその本気度合いに疑問が残る。なぜなら同社の所有する、玄関の呼び鈴(インターフォン)にカメラを取り付けて監視できるサービスを提供する会社、リングについての言及がないからである。リングは各地の数百の警察とすでに協力関係にある。リング自体が顔認証システムを提供しているわけではないが、各家から警察に提供されるビデオ映像に顔認証システムを適用することは可能だからだ。

 マイクロソフトのブラッド・スミス社長は6月12日になって、警察に顔認証ソフトウェアを販売しない方針を示した(ワシントンポスト2020年6月12日付)。米国において国家レベルで顔認証技術を統治する法が制定されるまで警察に同技術を販売しないことに決めたというのだ。といっても、すでに販売したものは利用されつづけることになるだろう。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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