高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト
英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
河野氏が強調する「ブースターの落下問題」は本当の理由ではない?
河野太郎防衛相が、秋田、山口両県で進めてきた陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に引導を渡した。自民党の国防族の議員たちを驚かせる急転直下の計画中止の発表だった。
大臣はその理由として、一貫して迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の発射後に切り離される推進補助装置の「ブースターの落下問題」を述べてきた。
防衛省は配備予定地の一つ、陸上自衛隊むつみ演習場がある山口県など地元自治体や地域住民に「演習場内にブースターを確実に落下させる」と説明し、安全性を強調してきた。しかし、その後、迎撃ミサイル本体の大幅な改修なしに実現できないことが分かり、配備を断念せざるを得なくなったというのだ。
河野防衛相は6月25日に日本外国特派員協会(FCCJ)で開かれた記者会見でも、筆者の質問に対し、「イージス・アショアの中止を決めた唯一の理由は、ブースターの落下をコントロールできないからだ。それは地域住民と約束してきた」と言い切った。
さらに、翌26日に出演したBS日テレの番組「深層NEWS」で「ブースターの落下の危険性がなければ、予定通り、配備は進められていたのか」と問われると、「はい、もちろんです」とも答えた。
しかし、本当にブースターが同演習場内に落下できないという理由だけで、イージス・アショア配備計画の中止を決めたのか。本当の理由は他にはないのか。