高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト
英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
河野氏が強調する「ブースターの落下問題」は本当の理由ではない?
そもそも、いざ北朝鮮から核ミサイル攻撃があったら、落下物を気にするより、まず迎撃すること自体が何より大事なはずだ。確実に迎撃しないと、それこそ東京や大阪といった日本の大都市で「第二の広島」や「第二の長崎」が生じてしまい、何百万人が死ぬ事態が発生するかもしれない。それは日本という国の国家存亡の危機になるかもしれない。
北朝鮮はすでに原子爆弾よりはるかに強力な水素爆弾を保有しているとみられている。
小野寺五典・元防衛相も6月22日付の毎日新聞への寄稿の中で、「飛んでくるミサイルを打ち落とす際、ブースターや破片などがどこに落下するかは通常、考慮されない。ミサイルや爆撃機が落とす爆弾と、打ち落とした後の破片などとどちらが怖いのかといえば、当然、前者だろう」と指摘している。
また、いざ情勢緊迫の有事の際は、ブースター落下の危険性のある地域住民に対し、避難用シェルターを準備し、事前に避難してもらうというオーソドックスな代替策は考えなかったのか。
筆者が東京特派員を務める英軍事週刊誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』のロンドン在住のベテラン編集長やデスクは河野防衛相の説明を聞き、「ブースターの落下問題が中止の理由とは信じられない」と一様に声を上げた。他に、元米海兵隊出身の知人も「イージス・アショア中止の決断の理由は他にあるはず」と今も疑っている。
仮に迎撃ミサイルからの落下物を心配するならば、首都圏や沖縄など全国17の部隊に計34基が配備されている地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)は大丈夫なのか。PAC3は東京のど真ん中の市ヶ谷にある防衛省内のグランドにも今も配備されている。
PAC3は一つの目標に対し、2発を発射する。PAC3は射程が数十キロで、迎撃に成功した場合、相手のミサイルと自らのPAC3の破片が落下する。そして、外した方のもう1発のPAC3も必ず地上に落ちる。イージス・アショアのブースターの落下を心配するなら、PAC3の破片などの落下は心配しなくていいのか。
筆者はこの点について、前述の日本外国特派員協会の記者会見で、河野防衛相に直接ただした。
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