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消費税減税、ベーシック・インカム…玉木雄一郎が提唱するコロナ後の経済政策

「金儲けのための資本主義」ではなく「人を大切にする資本主義」へ

玉木雄一郎 国民民主党代表

3. 取り戻すべき「3つのバランス」とその処方箋

いざという時に「生命の安全」を守り抜く

 コロナ後の社会の基本は、いざという時に国民の「生命の安全」を守ることである。そのために、既存のあらゆる社会システムを再構築する必要がある。

 また、コロナ後の経済システムは、どんな状況にあっても、すべての人が生きていくために必要な所得や医療へのアクセスが確保される社会でなくてはならない。そのためには、株主至上主義のような「金儲けのための資本主義」ではなく「人を大切にする資本主義」へ転換し、労働者を含む全てのステークホールダーが成長の果実を享受できる経済システムに変えていく必要がある。

 そのため、私たちは“3つのバランス感覚”を取り戻さなくてはならない。

① グローバルとローカルのバランス

 コロナ禍は、緊急時にマスクひとつでさえ十分に供給できないことを明らかにした。また、食料の輸出規制を行う国も現れた。戦後進められてきたグローバリズムは確かに世界を豊かにした側面はある一方、食料安全保障、エネルギー安全保障、経済安全保障の観点から見れば、我が国と我が国国民を極めて脆弱な環境の中に置くことになっている。

 そもそも、ここまで高度なグローバル化が進まなければ、COVID-19の世界的な感染拡大は起こらなかったであろう。

 だからこそ、これから大切なことは、国のあり方として、世界に委ねる部分と国内で対応すべき部分を峻別し、「戦略的な備え」に万全を期すことである。特に、行き過ぎたグローバル資本主義、特に金融グローバリズムによって生み出された国家の脆弱性や社会の格差を是正していく国家戦略が求められる。これからは、「戦略的に閉じる」政策が必要になってくる。

・急がれる経済安全保障の確立

 今後、早急に経済回復した中国などの他国や他国の影響下にある企業が、経済低迷で割安となった日本の企業やコア技術の買収を進めてくる可能性が高い。こうした「外資」による買収を防止するため、資本規制などを通じた「経済安全保障」の強化が不可欠である。同時に、外資の代わりに資本や劣後ローンなどの資本的支援を供給できる政府系金融機関の機能強化も急がれる。

 なお、コロナ禍の前から始まっていた米中の対立はさらに激化する様相を呈しているが、日本は米中のどちらにつくのかという二項対立的な文脈だけでなく、第3の軸として、英国及び英連邦との経済的、安全保障的な連携を強化する「21世紀の日英同盟」戦略を提唱したい。インドやオーストラリア、ニュージーランドとの関係は対中戦略としても極めて重要である。

 ただし、日本は盲目的に米国側に付くのではなく、米中対立がそれぞれの経済圏を分断・分離していこうとする「デカップリングの狭間」を抜けて、世界の経済圏をつなぐ「多様性のハブ」としての役割を果たす戦略が必要である。

拡大FreshStock/Shutterstock.com

・憲法に食料安全保障の明記も

 また、安倍政権が推進してきた大規模化、集約化、そして輸出に偏重した農業政策を改め、まずは国内需要を満たすことと、農家と農地の維持に重点を置く農政に転換しなくてはならない。効率一辺倒ではなく、農業の多面的機能にも着目しつつ、家族農業や兼業農家の価値も見直すべきだ。

 大切なことは、地方において営農継続可能な所得を補償し、安心して農業に取り組める環境を整えることである。そのためには、直接支払い制度の拡充のよって農家の所得を補償する必要がある。単に効率化や競争を促すだけでは食料自給率50%の目標実現は不可能だ。10年も経たないうちに農家数と農地が急速に減少し、多くの中山間地域で営農継続が困難となり、農村そのものが消滅することになるだろう。残された時間は少ない。

 あわせて、食料安全保障を憲法に明記すべきというのが私の持論だ。スイスは2017年、国民投票で憲法を改正し「食料安全保障」を明記した。

② 都会と地方のバランス

 気候変動とコロナ後の世界においては、これまで利点とされていた集中・管理・効率重視は弱点になっていることが明らかになった。コロナ禍においては東京を中心とする都市部は感染症拡大に対する脆弱性を露呈し、病床稼働率を重視した効率経営は医療崩壊の危険性と隣り合わせであることも分かった。

・地方の権限と財源を拡充する

 日本は長い歴史の中で中央集権と地域主権を繰り返してきた。今の行き過ぎた中央集権や官僚統制主義を改めなければ、国民の生命と安全を守れないことを多くの国民が実感したのではないか。今回は感染症だったが、大規模自然災害の対応においても、もっと地方に権限を与えるべきだ。

 今回のコロナ禍においても、現場を知らない国がずれたタイミングで的外れな政策を繰り出す中、まさに現場を抱える各都道府県知事や各市町村長ら首長は、それぞれ地域の実情に合うやり方で踏ん張った。こんな時代だからこそ、決定はできるだけ現場に近いところで行うことが大事になる。権限と財源の一層の地方移譲が必要だ。

 休業協力金や家賃支払い支援など、国も支援策を決めたが、地方が先んじて独自に政策を打ち出しており、重複も目立った。そうであるなら、最初から地方の裁量で自由に使える資金(感染症対応一括交付金)を渡し、地方の判断で地方の事情に応じた速やかな対応を促すべきではなかったか。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)も、地方の責任は定めるものの、その責任を果たすべき権限や財源の裏づけがなかったことが明らかになった。今回の対応を速やかに検証し、特措法の改正に着手すべきだ。

 また、憲法第8章の「地方自治の本旨」にはそもそも4条しか条文がなく、かつ、地方のことは全て国の法律で定めるとされている。地方の権限や財源を強化する方向で憲法議論を深めることも必要だ。

・公共事業悪玉論を超えて

 これまで、野党やマスコミは「公共事業は悪」だとする風潮が強かった。確かに、談合のような不透明なプロセスや費用対効果の低い公共事業は改めるべきだ。しかし、地方に流れる無駄なお金という印象を付けられてきた公共事業も、今や東京や大阪といった大都市が中心であり、地方に流れる公共事業費が減っていることはあまり知られていない。

 南海トラフ地震、富士山の噴火、そして近年頻発している大規模水害といった自然災害リスクへの対応として、必要な公共事業は大都市に限らず増やすべきだ。コロナ後の社会の基本は国民の生命と安全を守るため、「いざという時の備え」を万全にすることである。

 また、コロナ後に見込まれるアジアの成長を地方に取り込むためには、水際対策の強化も含めた地方の港湾と空港の整備には十分な予算が必要だ。

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筆者

玉木雄一郎

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう) 国民民主党代表

1969年、香川県寒川町(現さぬき市)生まれ。県立高松高校、東京大学法学部を経て大蔵省入省。ハーバード大学ケネディスクール修了。外務省(中近東アフリカ局中近東第一課)や金融庁(証券取引等監視委員会)へ出向した後、財務省主計局主査を最後に財務省を退官し、2005年衆院選に香川2区から初出馬、落選。2009年衆院選香川2区で初当選し、4回連続当選。2017年に希望の党代表。2018年に国民民主党代表。