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消費税減税、ベーシック・インカム…玉木雄一郎が提唱するコロナ後の経済政策

「金儲けのための資本主義」ではなく「人を大切にする資本主義」へ

玉木雄一郎 国民民主党代表

4.DXのためには「データ基本権」の確立が不可欠

・デジタル社会における新しい権利とプラットフォーマーの責任

 コロナの影響で苦しむ人に一刻も早く届けるべき10万円の給付金が、特に都市部で遅れる事態が発生した。その原因の一つが行政のデジタル化の遅れである。今後、真に困っている人に速やかに支援の手を差し伸べるためにも、給付事務等にマイナンバーと住民基本台帳ネットワークの活用などを進めていくべきだ。

 さらに、オンライン教育やオンライン診療、そしてライドシェアも、生活インフラの地域間格差を是正し、人々の移動の権利を保証するために有効な手段だ。地方での豊かな暮らしを応援する観点からも積極的に進めていかなくてはならない。

 ただし、今後の大きな課題としては、データ社会におけるインフラとして機能しつつある「プラットフォーマー」による個人データの濫用も許してはならない。そのためには、自己に関するデジタルデータが正しく管理され、また自ら決定できる「データ基本権」が確立されなくてはならない。

 この「データ基本権」は、健全なデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタルによる変革)を実現するためにも不可欠な権利であり、「新しい権利」として基本的人権を定めた憲法13条に追加することも検討すべきだ。なぜなら、単に自己に関するデータを漏洩から保護する権利に留まらず、サイバー空間に自らの人格を複製した「デジタルツイン(双子)」について自己決定する権利をも含む、新しい人権概念だからである。

 また、思想や良心の自由を保護するだけでなく、その思想や良心そのものが、プラットフォーマーなどによる心理操作に左右されずに形成されることを保証する「認知過程の自由」も、思想・良心の自由を定めた憲法19条に付随する新たな権利として検討していく必要がある。

5.必要なのは価値観の転換

 コロナ禍は私たちにとって「本当に大切なものは何か」に気づくきっかけを与えてくれた。その一つは、効率や生産性の名の下に犠牲にされてきた生命や健康である。そして、もう一つが「時間」ではないだろうか。

 外出自粛で家族と過ごす時間が増え、家庭内暴力が増えたとの報告がある一方、今まで仕事が忙しくて向き合えなかった配偶者や子どもと過ごす時間が増えたとの声や、強制的に在宅勤務が導入されて当たり前のように毎日乗っていた満員電車から解放されてよかったとの声も届いている。

 実は、あのニュートンが万有引力の法則を発見したのも、ペストの流行で通っていたケンブリッジ大学が一時休校となり実家に戻っていた時のことだった。ニュートンは後にこの休校期間を「創造的休暇」と呼んだとされている。日常業務から解放され、自由な時間と空間の中でこそ、人間の創造性は開花するのかもしれない。

・「可処分時間」を増やそう

 自由に使える所得を「可処分所得」というが、自由に使える時間である「可処分時間」を増やすことも人生においてはとても大切だということを、コロナで改めて認識させられたのではないだろうか。

 コロナ後の社会における政策は、家計の可処分所得と可処分時間をともに増やしていくことに力を入れていくものに変えていかなくてはならない。それはこれまでのビジネスモデルや働き方を大きく変えることにつながるかもしれないが、こうした新たな価値観と視点こそが我が国が直面する最大の課題である少子化問題への解決にもつながる。

 当たり前だったことが当たり前でなくなったり、大切だと思っていたことは実はそうではなかったり、逆に、意識もしていなかったものが重要だと気付かされたり、今回のコロナ禍は私たちの価値観を変化させることにつながっていくだろう。それは、数世紀続いた近代産業文明の歪みを改めていくプロセスなのかもしれない。

 今年、炎鵬関の動画「さぁ、ひっくり返そう」が話題になったが、コロナ後の時代を生き抜くためには、価値観や生活様式をはじめ当たり前だと信じ切ってきたものをひっくり返していかなくてはならないのだと思う。そして、私たち政治もその例外ではないことを忘れてはならない。

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筆者

玉木雄一郎

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう) 国民民主党代表

1969年、香川県寒川町(現さぬき市)生まれ。県立高松高校、東京大学法学部を経て大蔵省入省。ハーバード大学ケネディスクール修了。外務省(中近東アフリカ局中近東第一課)や金融庁(証券取引等監視委員会)へ出向した後、財務省主計局主査を最後に財務省を退官し、2005年衆院選に香川2区から初出馬、落選。2009年衆院選香川2区で初当選し、4回連続当選。2017年に希望の党代表。2018年に国民民主党代表。