権力にとりつかれたトップが、いかに困った事態を招くか
2020年07月01日
8月9日にベラルーシ大統領選が迫っている。といっても「遠くて遠い国」ベラルーシのことを知る日本人は少ないかもしれない。いまの大統領はアレクサンドル・ルカシェンコで、1994年に大統領に当選以来、6回目の当選をめざしている。
しかしながら、憲法改正や言論弾圧、加えて対立候補者逮捕などによって長期政権を守ってきたにすぎない。国内にロシアの二つの軍事基地をかかえ、2国間に「単一防空システム」を要するため、ルカシェンコはプーチンと結託しつつ、自国での権力基盤を整え、「ヨーロッパの独裁者」とまで呼ばれるようになっている。
こんな国でいま何が起きているのか。それを知れば、権力にとりつかれたトップによる長期政権がもたらす混乱ぶりがわかる。それは、日本にも相通じるところがある。
ここで、ルカシェンコの「マヌケぶり」をわかってもらうために、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として彼がのべた「迷言集」を紹介しよう。いずれも、ロシアNIS経済研究所の服部倫卓所長が朝日新聞のGLOBE+(「欧州最後の独裁国ベラルーシの奇抜すぎるコロナ対策」2020年4月14日)に紹介したものである。
「手洗いの回数を増やして、食事を朝昼晩と規則正しく摂るようにしよう。私は酒を飲まない人間だが、最近では冗談で、ウォッカで手を洗うだけでなく、1日に純アルコール換算で40~50グラムのウォッカを飲めばこのウイルスを消毒できるのではないかと言っている。もちろん、仕事中ではないが」
「諸君、今日はサウナに行きたまえ。週に2~3度でも、効果がある。中国は我々に、このウイルスは摂氏60度で、もう生きられないというアドバイスをくれた」
まだまだ迷言はつづくのだが、こんな調子だから、諸外国がサッカーリーグ戦を中断していた時期にも、ベラルーシではサッカーが堂々と開催されつづけていた。他方で、「コロナ禍」にあっても、政府は個人にも法人にも何の支援策もとっていない。
東京五輪や習近平訪日の実現のために国民の命を軽視するだけでなく、「アベノマスク」を国民全員に配布するという「迷案」に自己満足している安倍晋三首相もかなりの「マヌケ」だが、ルカシェンコと比べると、ほんの少しだが、まともにみえてくる。
安倍自民党総裁は自分の気に入らない人物がいると、1億5000万円を出しても別の人物を応援し、自分に批判的な人物の追い落としをはかろうとするらしい。まったく子どもじみた話だが、自分の秘書らに関与させて支援し、買収まで招いたとすれば、カネによる民主主義の否定にかかわっていたことになりかねない。権力維持へのあくなき執念が法律さえ無視するかのような行動にかりたてているかのように思えてくる。
ルカシェンコもまた
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