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朝鮮戦争と兵隊・武器・弾薬を輸送した旧国鉄の戦争協力

朝鮮戦争70年 日本の「戦争協力」③日本で訓練した韓国軍の輸送にも動員され

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

米軍への列車ダイヤを最優先、機密保持は絶対

 連合国最高司令官のマッカーサー元帥が戦争勃発後、最初にとった行動は、韓国に駐留する米軍人とその家族、民間人の保護、日本への引き揚げだった。国鉄に対しては、第3鉄道輸送司令部から、九州に脱出した米国人について「事態は緊急であるため、日本側列車に支障があっても要請通り実施されたい」という旨の要求があった。

 これを受けて国鉄は、1950年6月29日に運輸総局長から関係鉄道局長に「朝鮮動乱勃発に伴う緊急輸送について」とする指令書をだした。指令書は「輸送計画」「輸送実施」「機密保持」の3項からなり、それぞれ具体的に、
「急遽計画され或いはその内容変更若しくは取り消しなど、緊急措置によるものが多く……絶対これらにつき過誤なきを期すること」
「引揚者の輸送に当たっては、特にその接遇に萬全を期すること」
「輸送関係事項は……部外には絶対これを漏洩しないように格段の配意をすること」
などと指示している。輸送に際し列車ダイヤの最優先、絶対の機密保持を課すという気の使いようだ。

兵員や軍需品の本格輸送はじまる

拡大Everett Collection/shutterstock.com

 韓国からの米国人の「引揚(脱出)輸送」につづいて、米軍を中心に英軍などからなる連合軍の朝鮮への緊急出撃が決定されたため、GHQの輸送司令部から国鉄に「朝鮮派遣輸送」の要請があった。かいつまんでいうと、占領任務に従事する米軍第8軍は日本各地に展開しており、国鉄はそれぞれの駐留地から朝鮮へ向けての出発地(港)まで、部隊を輸送することになったのである。

 さらに、富士山麓において演習中の部隊を原隊に復帰させ、その後朝鮮に派遣する「原隊復帰輸送」も併せておこなわれた。ここに戦場に向かう兵隊と武器・弾薬などの軍需品の本格的な輸送がはじまった。

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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