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ビッグテックは解体できるか

超国家企業に対して高まる欧州からの圧力と技術革新

塩原俊彦 高知大学准教授

 いま世界には、「ビッグテック」とか「テックジャイアンツ」と呼ばれる超国家企業が存在する。その代表格がアマゾン、アップル、アルファベート(グーグル)、フェイスブックだろう。これらの企業は各国で節税・脱税を行い、国際的な課税強化の対象となっている。

 米国では、ビッグテック解体を説くエリザベス・ウォーレン民主党大統領候補の敗退で、その解体が実現する可能性は薄れている。だが、米下院司法委員会はビッグテックに対する反トラスト法の調査に関連して2020年7月下旬に公聴会を開き、各社の最高経営責任者(CEO)に証言を求める。ここでは、ビッグテック解体をめぐる諸問題について考えたい。

拡大民主党の大統領候補指名を争ったエリザベス・ウォーレン氏 Andrew Cline / Shutterstock.com

独占解体でも株価は上昇?

 1911年に米最高裁はスタンダードオイルを34社に分割するよう命令を出した。これにジョン・D・ロックフェラーは困惑したかというと、そうではない。数年後、これらの会社の株価は上昇し、各社の株式の25%強を所有していたロックフェラーの財産は1911年の3億ドルから1913年には約9億ドル(いまのカネに換算すると約230億ドル)と3倍になったからだ。

 これは、The Economist(2019年10月26日号)の「解体は実行困難」という記事の冒頭で紹介されている話である。ビッグテックを解体しても、その支配者の財産が増大するのであれば、その所有者らの猛反対を受けずにばらばらにできるのではないかとの見方も生じる。

 しかし、実際には現実問題として解体は難しい。なぜならビッグテックごとに収入部門が異なっているために一律の議論がしにくいいためだ。2019年の予想収入の部門別構成比(%)を示した図からわかるように、グーグルの場合、収入の柱は広告で62.7%を占めている。YouTube事業、Google Cloud事業はそれぞれ15.7%、8.5%にすぎない。

拡大図 ビッグテック4社の予想収入の部門別構成比(%)
(出所)https://www.economist.com/business/2019/10/24/dismembering-big-tech

 アマゾンはオンラインストアの運営で収入の53%を稼ぎ出すが、広告による収入は3.9%にとどまる。フェイスブックは比較的グーグルに似ているが、広告の占めるウェートは71.6%と高い。アップルの場合には、モバイル関連ハードウェアがもたらす収入が86%もあり、ソフトウェアの会社というよりもハードウェアの製造・販売会社という色合いが濃い。

 もともとウォーレンがビッグテック解体を主張するようになったのは、2012年に写真共有ソーシャルネットワークのインスタグラム、2014年にメッセージ交換アプリ、ワッツアップ(WhatsApp)を買収したフェイスブックを狙い撃ちするねらいがあった。フェイスブックは2016年の大統領選でロシアによるディスインフォメーション(「情報操作 ディスインフォメーションの脅威」を参照)に利用された「前科」があったから、風当たりが強かったのである。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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