超国家企業に対して高まる欧州からの圧力と技術革新
2020年07月13日
いま世界には、「ビッグテック」とか「テックジャイアンツ」と呼ばれる超国家企業が存在する。その代表格がアマゾン、アップル、アルファベート(グーグル)、フェイスブックだろう。これらの企業は各国で節税・脱税を行い、国際的な課税強化の対象となっている。
米国では、ビッグテック解体を説くエリザベス・ウォーレン民主党大統領候補の敗退で、その解体が実現する可能性は薄れている。だが、米下院司法委員会はビッグテックに対する反トラスト法の調査に関連して2020年7月下旬に公聴会を開き、各社の最高経営責任者(CEO)に証言を求める。ここでは、ビッグテック解体をめぐる諸問題について考えたい。
1911年に米最高裁はスタンダードオイルを34社に分割するよう命令を出した。これにジョン・D・ロックフェラーは困惑したかというと、そうではない。数年後、これらの会社の株価は上昇し、各社の株式の25%強を所有していたロックフェラーの財産は1911年の3億ドルから1913年には約9億ドル(いまのカネに換算すると約230億ドル)と3倍になったからだ。
これは、The Economist(2019年10月26日号)の「解体は実行困難」という記事の冒頭で紹介されている話である。ビッグテックを解体しても、その支配者の財産が増大するのであれば、その所有者らの猛反対を受けずにばらばらにできるのではないかとの見方も生じる。
しかし、実際には現実問題として解体は難しい。なぜならビッグテックごとに収入部門が異なっているために一律の議論がしにくいいためだ。2019年の予想収入の部門別構成比(%)を示した図からわかるように、グーグルの場合、収入の柱は広告で62.7%を占めている。YouTube事業、Google Cloud事業はそれぞれ15.7%、8.5%にすぎない。
アマゾンはオンラインストアの運営で収入の53%を稼ぎ出すが、広告による収入は3.9%にとどまる。フェイスブックは比較的グーグルに似ているが、広告の占めるウェートは71.6%と高い。アップルの場合には、モバイル関連ハードウェアがもたらす収入が86%もあり、ソフトウェアの会社というよりもハードウェアの製造・販売会社という色合いが濃い。
もともとウォーレンがビッグテック解体を主張するようになったのは、2012年に写真共有ソーシャルネットワークのインスタグラム、2014年にメッセージ交換アプリ、ワッツアップ(WhatsApp)を買収したフェイスブックを狙い撃ちするねらいがあった。フェイスブックは2016年の大統領選でロシアによるディスインフォメーション(「情報操作 ディスインフォメーションの脅威」を参照)に利用された「前科」があったから、風当たりが強かったのである。
だが、ウォーレンの大統領選離脱だけでなく、現実に目を向けてみると、ビッグテックの解体はきわめて困難な情勢にある。第一に、米国議会がビッグテック解体に傾く可能性が低い
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください