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「香港問題」は公約違反の国際問題~国家安全維持法が施行

人民中国建国以来の重大局面にどう対応するか

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

中国が国安法施行を急いだ理由

 ところで、今回、中国政府が異常な早さで国安法を施行させたのには、いくつかの理由がある。

 第一に、昨年の区議選での民主派の圧勝だ。驚くべきことに、香港政府や中国政府のトップは、選挙では親中派が勝つと予想していたらしい。仮に今年の立法会選挙で民主派が勝てば、香港がさらに自立の方向に向かうことを恐れたのだろう。

 立法会選挙で勝つには、そもそも民主派候補が立候補できないようにすればいい。だから、国安法には候補者が「香港政府に忠誠を誓う」というルールが盛り込まれた。

 第二に、今ならコロナ禍を理由に、デモや集会を厳しく規制できるという事情がある。市民の側も、コロナを理由に参加を見合わせるだろう。

 第三に、国際世論からの中国批判は厳しいが、その先頭に立つ米国が、人種差別問題と大統領選挙で国内世論が分断されていることだ。中国にすれば、米国が一丸とならない今がチャンスというわけだ。

 これらの理由から好機到来とばかりに、中国政府がなりふり構わず全速力で突っ走っている印象だ。

 いずれにせよ、今後は香港の行政、立法、司法が中国政府の思うままになる。ついに「一国二制度」が「一国一制度」になったのである。

拡大警官隊(手前)が監視するなか、道路を埋める香港のデモ隊=2020年7月1日

反古にされた国際公約

 一国二制度の要諦は、香港は今まで通り自由主義と民主主義を貫き、社会主義の中国とは明確に異なる制度で運営されるという点にある。換言すれば、外交と防犯をのぞき、あらゆる面で自主性が尊重されるという趣旨である。今回の国安法体制が、50年間の不変を約束された一国二制度を葬り去ることになるというのが、国際社会の共通認識である。

 1984年の中英共同声明によって両国間で合意されたことは、明白な国際公約であるという認識も、国際社会の共通認識だろう。この中国と英国による合意文書は。署名されて国連にも登録されている。中国は、われわれが一国二制度について言及すると、「内政干渉だ」と反発するが、今回われわれが合意文書を反古にすることを黙認すれば、そもそも国際社会が成り立たなくなる。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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